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ブラームスの交響曲第4番

 サガンの小説『ブラームスはお好き』。恥ずかしながら一度も読んだことないのですが、はてはて、いったい、ブラームスのどの曲を想定して「お好き?」と言っているんでしょうか、ずいぶん気になります。それとも、決して駄作がないといわれるブラームスですから、どの曲でもオーケーなのでしょうか。

 たしかに、ブラームスの交響曲はどれも素晴らしいし、ピアノ協奏曲もヴァイオリン協奏曲も重厚でとてもステキです。小品にもとても優れた作品があります。どれがイチバンといわれたら困ります。そこで、例によって他人さまの意見を取り入れるわけですが、音楽評論家の樋口裕一さんは、「交響曲第4番にもっとも惹かれる」とおっしゃっています。

「第1楽章の出だしの、すすり泣くようなヴァイオリンのメロディにまず心打たれる。とはいえ、ここでも抑制が効いているために、嘆きを爆発させたというよりも、抑えても抑えきれないでつい漏れてしまうため息のようだ」

 樋口さんのいうこの出だしのメロディーはまことに印象的でして、『消えたオーケストラ』の著者・宇神幸男さんの言を借りれば、「メロディーは下降上昇をあてどなく繰り返し、低廻(ていかい)してやまない。だが、こんなゆくえさだめぬ旋律を書けるのは一人ブラームスだけではないか」、と。さすがに作家さんは上手い表現をしますねー。

 それから、第4番で興味深いのは、作曲家の自筆譜には、この”たゆたう”ような導入部分の前に、「ジャーン!」だったか「ジャジャーン!」だったか、派手な前触れの音を用意した痕跡が残っているそうですね。結局そのページには大きく×印が書かれていて、「やっぱりやーめた」となったらしいんです。きっと、やめてよかったんだと思います。


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