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ヘッドホン向けのディスクづくり?

 古いオーディオ・ファンだからでしょうか、音楽はあくまで相応の空間のなかで聴くべきものと思っています。ですから、ヘッドホンやイヤホンはめったに使いませんし、使うとしても、よっぽど緊急避難的な場合のみです。ところが、今の若い人たちは、ポータブル・オーディオで音楽を楽しむというのが主流なんですね。スピーカーで聴くのは皆無という人もいるとか。へーと思いますが、そういえば、家電量販店のオーディオ売り場に行くと、まービックリするほどたくさんのヘッドホンやイヤホンが並んでいますものね。中にはえらくオシャレなものもあります。

 それはいいんですが、ちょっと驚く話を耳にしました。今のレコード会社は、そういった若者のオーディオ・シーンに合わせて、ヘッドホンで聴くのを前提としたディスク作りをしているというではありませんか。つまりヘッドホンで聴いたときにいちばん良い音が出るように調整している。だから、従来のオーディオ装置では良い鳴り方をしない、って。今のところはJ−POPだけらしいですけど、でも、これはオジサンにとっては愕然とするようなお話です。

 どういうカラクリかというと、録音された音の加工段階で、コンプレッサーを使って小さい音を大きく、大きい音を小さくして、全体として再生時の平均音量を大きくする。そうすれば、ダイナミックレンジが狭いポータブル・オーディオやミニコンポ、またヘッドホンやイヤホンなどでは音が良く聴こえる。ところが、広大なダイナミックレンジを持つ本格的なオーディオ機器では、「音と音の隙間」が少なくなり再生時に音が混じる、平面的でうるさい音になるなどの問題が生じる。ですって。

 まー、あちらさんも商売ですからね、若者たちにそっぽを向かれては困る。彼らのオーディオ・シーンに合わさなくてはならない。冷静になってよくよく考えれば、これはこれで有りなのかなとも思います。それを直ちに「困った!」とか「邪道だ!」するのは、それこそ「時代遅れ」の古オヤジの考え方かもしれません。早い話が、J-POPはわざわざ本格オーディオで聴かなきゃいい。ミニコンポやポータブル・オーディオで良い音が得られるのなら、それはそれで素晴らしいこと。箱庭の美学じゃないですが、そうした極小空間で高みを追求するのも、日本人ならではの拘りと技術なのかもしれませんね。でも、クラシック音楽だけは決してそうならないよう切に願うところです。

(2018年8月)


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