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若書きの作品は薄っぺらい?

 同じ作曲家の作品であっても、当然ながら、若いときの作品もあれば、年とってからの作品もあるわけです。たとえば、ブラームスのピアノ協奏曲は2曲しかありませんが、《第1番》は26歳のとき、《第2番》は何とそれから22年を経た48歳のときの作品です。2つの作品を比較して、若書きの《第1番》は「気負いばかりが前面に出て、内容の薄さを感じる」などと評する向きがあります。こういうのはブラームスに限った話ではなく、多くの作曲家について、若書きの作品は「薄っぺらい」などと論評されがちです。

 しかし、そうした狭量?な捉え方はいかがなものでしょうか。いくら天才的な作曲家であっても、当然ながら一人の人間です。さまざまな経験や苦労や失敗を重ね、多くの悩みと闘いながら人間として成長していったはずです。曲だって、作曲家が生きてきた過程と共にある。だから、若いときから達観したような作品をつくるのも妙な感じだし、年とってからの作風が若いときと同じというのもおかしなことです。

 それに、若いからこそ書ける作品ってのもあるはずです。純粋で、熱い血潮がほとばしり出るような作品や、恥ずかしいほどにロマンチックな作品。そんな、年とってからは決してできないだろうなという作品。ブラームスの《第1番》なんか、燃えさかる情熱がそこかしこにあふれそうになるのを一生懸命に抑えよう、抑えようとしている、でも抑えきれない。実に若者らしくストイックでステキな作品だと思うんですね。若いんだから、気負いだって当然にある。皆さんにもそんな時期がおありだったでしょう?

 それを、「若書きだから薄っぺらい」とニベもなく言ってしまったんでは、まことに薄っぺらい鑑賞態度だと反論したくなります。何より、若い人たちの真っ直ぐな情熱や感性など、年を食ったおじさんなどにとって、しばしば羨望の対象となるもんだし、また、失いたくないものでもあります。だから、ただ薄っぺらいと否定的にしか捉えられないのは、自身の老化の証しだという気がします。そう思いませんか?

感じたい、たくさんの「美しい」

 音楽評論家の許光俊さんが、こんなことをおっしゃっています。「音楽抜きの人生はあり得ないと考えている人も多いだろうが、逆に、人生抜きの音楽もあり得ない。どんな音楽であれ、人生とまったく無縁に生まれるものではないし、聴かれるものでもない」

 「それなのに、評論家の多くはそのあたりには口をつぐみ、『自分はこんな人間』という部分を棚上げしたまま他人の音楽を語っている」って。まるで拾ってきたきれいな石を褒めるが如くに、って。たとえば、「極貧だからこそわかる音楽、贅沢三昧していないとわからない音楽、はたまた童貞、処女でなければ感動できない音楽、頽廃の果てに魅力を感じる音楽だってあるはずなのに」。

 確かにですね、不肖私も、これまで生きてきて、いろんな過程のなかで音楽への嗜好はさまざまに移り変わってきたと感じます。さらに同じ曲であっても、若い頃と今では感じ方も異なってくる。そして、許さんがおっしゃるには、「本来、美について語るということは、突き詰めるほどに、『それを美しいと感じる自分』を語ることと切り離せないはず。なぜなら美は決して物理的なものなどではなく、この上なく主観的なものなのだから」と。

 なるほどです。まーでも、評論家さんの立場からすれば、広くあまねく理解を求めようとするため、ある程度は自我を抑えた論になってしまうのは仕方のないこと。むしろ個人の美意識?を押しつけられることの方が、好ましくないようにも感じます。それより何より、「それを美しいと感じる自分」を高め、少しでも多く、いろんなものを自らの力で「美しく」感じられるようになりたく思う所存です。だって、そのほうが、人生、絶対にお得ですから。そのためには、できるだけ多くの経験をして、色んな価値観に触れる必要があるんでしょうね。今さらですが・・・。

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