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漢詩を読むがんばれ高校生!

望廬山瀑布(廬山の瀑布を望む)

李白

日照香爐生紫煙
遙看瀑布掛長川
飛流直下三千尺
疑是銀河落九天

日は香炉(こうろ)を照らして紫煙(しえん)を生(しょう)ず
遥(はる)かに看(み)る瀑布(ばくふ)の長川(ちょうせん)に掛(か)くるを
飛流(ひりゅう)直下(ちょっか)三千尺(さんぜんじゃく)
疑(うたが)うらくは是(こ)れ銀河の九天(きゅうてん)より落つるかと

【訳】
 日の光が香炉峰を照らすと、紫の雲が立ちのぼる。はるか遠くに滝が長い川を掛けたかのように流れ落ちているのが見える。飛ぶような滝の流れが、まっさかさまに三千尺も下へ流れ落ちている。まるで銀河が天空から流れ落ちているようだ。

【解説】
 景勝の地・廬山(ろざん)にある滝(瀑布)を眺めて作った詩で、壮大な風景をダイナミックに歌っています。李白、26歳の作とする説と、56歳で廬山の屏風畳(へいふうじょう)に隠居した時の作とする説があります。廬山は周代から道士や隠棲者などとの関りが深い地で、六朝東晋の詩人・陶淵明もこの山の麓に隠居しました。そのほか白居易、蘇軾など、廬山を愛しその魅力を歌った詩人の数は枚挙に暇がありません。
 
 七言絶句。「煙・川・天」で韻を踏んでいます。〈廬山〉は漢詩によく登場する江西省にある山で、氷河に削られた奇峰怪岩や瀑布群で知られる世界遺産。殷、周の時代に匡(きょう)姓を名乗る七兄弟が廬(いおり)を結んで隠棲したことからこの名がつけられたといいます。主峰の漢陽峰(標高1474m)をはじめ全体で171もの峰があります。〈香炉〉は廬山にある峰の一つの香炉峰で、形が香炉に似ているところからこの名があります。清少納言の『枕草子』にも登場します。〈紫煙〉は靄(もや)または霧。「香炉」の縁語。〈長川〉は「前川(前方の川)」とするものもあります。〈三千尺〉は非常に長いたとえ。〈疑是〉は、~かと見まごう。〈銀河〉は天の川。〈九天〉は天の一番高いところのこと。

 なお、唐詩が書かれた時代は、しばしば初唐(618~709年)・盛唐(710~765年)・中唐(766~835年)・晩唐(836~907年)に区分されます。時代の変遷とともに、詩の持ち味の変化も表しています。

李白(りはく)

盛唐の詩人(701年~762年)。唐代のみならず中国詩歌史上で同時代の杜甫とともに最高の存在とされる。奔放で変幻自在な詩風から、後世に「詩仙」と称される。唐代詩人のなかでは珍しく科挙の試験を受けていない。自らの才を自負し、かならず重用されて政治的手腕を発揮しうるものと信じていたが、その機会は長く訪れなかった。しかし、43歳の時に長安に上り、玄宗に召されて歓待を受け、天子側近となった。
杜甫より李白が11歳年上だったが、二人はお互いよき友人であった。

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