『詩経』
青青子衿
悠悠我心
縱我不往
子寧不嗣音
青青子佩
悠悠我思
縱我不往
子寧不來
挑兮達兮
在城闕兮
一日不見
如三月兮
青青(せいせい)たる子(し)が衿(えり)
悠悠(ゆうゆう)たる我(わ)が心(こころ)
縱(たと)い我(わ)れ往(ゆ)けざるも
子(し)寧(なん)ぞ音(たより)を嗣(おく)らざる
青青(せいせい)たる子(し)が佩(はい)
悠悠(ゆうゆう)たる我(わ)が思(おも)い
縱(たと)い我(わ)れ往(ゆ)けざるも
子(し)寧(なん)ぞ来(き)たらざる
挑(とう)たり達(たつ)たり
城闕(じょうけつ)に在(あ)り
一日(いちじつ)見(み)ざれば
三月(さんげつ)の如(ごと)からん
【訳】
青々としたあなたの衿、あなたを慕って待ち焦がれる私の思いは尽きません。たとえ私があなたの所へ行けなくても、どうして私に便りを下さらないのですか。
青々としたあなたの佩(はい)、あなたを慕って待ち焦がれる私の思いは尽きません。たとえ私があなたの所へ行けなくても、どうして私のもとに来て下さらないのですか。
あなたは、気ままに楽しく行ったり来たりして、城門のあたりにいらっしゃる。一日でもあなたに会わなかったら三月も会っていないかのように、あなたを恋しく思っています。
【解説】
この詩は、かつては学校の廃れたのをそしった歌、すなわち青い衿の主を世の乱れとともに遊び回っている学生と見なし、彼らに復学を呼びかけたものと解されていましたが、後に、男に恋心を寄せる女の歌であると解されるようになりました。また一方、春の神を迎える乙女たちの心をうたった歌であるとする解釈もあります。古代には、立春の日に、天子が青い旗を立て青い衣装を着て春気を迎えたとか、若者が青一色の衣装をまとって東の郊外から春を迎えたなどの習俗があったといいます。ここでは、あくまで自分と離れている男を恋い慕う女の歌として説明します。
四言古詩。〈青青〉は青々とした。躍動感あふれる若さの象徴。〈子衿(しきん)〉は、あなたの襟(えり)。「子」は成人した男子に対する敬称。〈悠悠〉は、いつまでも続くさま。〈縱〉は、たとえ~であったとしても。〈不往〉は行けない。〈寧不〉は、どうして~しないのか。~すればいいのに。〈嗣音〉は便りをよこすこと。〈佩〉は腰に帯び玉をつるすための紐。〈挑兮達兮〉は「桃達」を分割した言い方。行ったり来たりする、飛んだり跳ねたりする。「桃」は到(とう)の音を借りたもので、「兮」は調子を整える助字。〈城闕〉はお城の門。町の入り口。〈見〉は会う。〈如〉は、~のようである。〈三月〉は三か月。
『詩経』は、305編からなる中国最古の詩集で、孔子が編集したといわれます。風(諸国の民謡)・雅(宮廷の音楽)・頌(祭礼の歌)の三部からなっており、風は国風ともいい、周南・召南・邶(はい)・鄘(よう)・衛・王・鄭・斉・魏・唐・秦・陳・檜・曹・豳(ひん)の15に分かれ、雅は大雅・小雅の二つに分かれ、頌は周頌・魯頌・商頌の三つに分かれています。
これらの詩を孔子は、「詩三百、一言以てこれを蔽(おお)わば、曰く、思い邪(よこしま)なし」と評しており、純朴な心情を詠ったものが多くあります。また、『詩経』に収める詩は四言詩を基本とし、韻は踏みますが、句数、平仄などの形式は定まっていませんでした。
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