漢詩を読む

漢詩を読む  

目次

貧交行(杜甫)夜雪(白居易)望廬山瀑布(李白)七歩詩(曹植)望湖樓醉書(蘇軾)銷夏詩(袁枚)楓橋夜泊(張継)春暁(孟浩然)春夜喜雨(杜甫)
清明(杜牧)春夜(蘇軾)清平調(李白)短歌行(曹操)述懐(魏徴)春望(杜甫)秋浦歌(李白)雑詩(陶淵明)生年不満百(文選)

偶成(朱熹)勧学(朱熹)偶成(西郷隆盛)憫農(李紳)対酒(白居易)江雪(柳宗元)遊子吟(孟郊)鹿柴(王維)九月十日(菅原道真)
撃壌歌(十八史略)秋風辞(武帝)題烏江亭(杜牧)責子(陶淵明)代悲白頭翁(劉廷芝)山行(杜牧)勧酒(于武陵)己亥歳(曹松)飲湖上初晴後雨(蘇東坡)

漢詩を読む

貧交行(ひんこうこう)~杜甫

翻手作雲覆手雨
紛紛輕薄何須數
君不見管鮑貧時交
此道今人棄如土

手を翻(ひるがえ)せば雲となり 手を覆(くつがえ)せば雨
紛紛(ふんふん)たる軽薄 何ぞ数うるを須(もち)いん
君見ずや管鮑(かんぽう)貧時の交わり
此の道 今人(こんじん)棄(す)つること土の如し

【解釈】
 手のひらを上に向ければ雲となり、下に向ければ雨となる。そのようにくるくると変わる人情の軽薄さは数えてもきりがない。よく見よ、あの管仲(かんちゅう)と鮑叔(ほうしゅく)の貧しい時代の交わりを。そんな素晴らしい友情の道を、今の人は土くれのように捨ててしまっている。

(注)「管鮑貧時の交わり」は終生変わらない友情をいう。
(関連記事)管鮑の交わり

夜雪(やせつ)~白居易

已訝衾枕冷
復見窓戸明
夜深知雪重
時聞折竹聲

已(すで)に訝(いぶか)る衾枕(きんちん)の冷やかなるを
復(ま)た見る窓戸(そうこ)の明らかなるを
夜 深(ふこ)うして雪の重きを知る
時に聞く折竹(せつちく)の声

【解釈】
 寝床についてもなかなか寝つかれず、蒲団も枕も冷え冷えとしている。ふと窓を見上げると、明りのように白い。夜がふけるにつれて、雪がだいぶん積もったのだろう。耳を澄ませば、時折り、雪の重みで竹が折れる音さえ聞こえてくる。

望廬山瀑布(廬山の瀑布を望む)~李白

日照香爐生紫煙
遙看瀑布掛長川
飛流直下三千尺
疑是銀河落九天

日は香炉(こうろ)を照らして紫煙(しえん)を生ず
遥(はる)かに看(み)る瀑布(ばくふ)の長川(ちょうせん)に掛(か)くるを
飛流 直下(ちょっか)三千尺
疑うらくは是(こ)れ銀河の九天(きゅうてん)より落つるかと

【解釈】
 日の光が香炉峰を照らすと、紫の雲が立ちのぼる。はるか遠くに滝が長い川を掛けたかのように流れ落ちているのが見える。飛ぶような滝の流れが、まっさかさまに三千尺も下へ流れ落ちている。まるで銀河が天空から流れ落ちているようだ。

(注)廬山(ろざん)は氷河に削られた奇峰怪岩や瀑布群で知られる。「九天」は天の一番高いところのこと。

七歩詩(七歩の詩)~曹植

煮豆持作羹
漉豉以爲汁
萁在釜下然
豆在釜中泣
本是同根生
相煎何太急

豆を煮て持って羹(あつもの)と作(な)し
豉(し)を漉(こ)して以って汁と為(な)す
萁(き)は釜の下に在りて然(も)え
豆は釜の中に在りて泣く
本(もと)は同根より生ずるに
相い煎(に)ること何ぞ太(はなは)だ急なる

【解釈】
 豆を煮て鍋物を作り、つぶした豆をしぼって汁をとる。豆がらは釜の下で燃え、豆は釜の中で泣く。豆も豆がらも元は同じ根から生まれ出たのに、なぜこうも煎られねばならないのか。

(注)曹植が兄の曹丕(魏の文王)から文武の才能を妬まれ、7歩歩くうちに詩を作れなければ殺すといわれて作ったとされる詩。兄弟を豆と豆殻の関係にたとえた。
(関連記事)七歩の才

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望湖樓醉書(望湖楼に酔うて書す)~蘇軾

黒雲翻墨未遮山
白雨跳珠乱入船
巻地風来忽吹散
望湖楼下水如天

黒雲(こくうん)墨を翻(ひるがえ)して未(いま)だ山を遮(さえぎ)らず
白雨(はくう)珠(たま)を跳(おど)らせ乱れて船に入(い)る
地を巻く風 来(きた)りて忽(たちま)ち吹き散じ
望湖楼(ぼうころう)下(か)水(みず)天の如(ごと)し

【解釈】
 黒雲が墨をひっくりかえしたように広がってきたが、まだ山を隠してはいない。すると、真珠のような白い雨粒がばらばらと船のなかに入り込んできた。そのうち大地を巻き上げるような強い風が吹いてきて、たちまち雨雲を吹き散らす。望湖楼の下の湖水はふたたび大空の色をたたえて広がっている。

(注)楼上で一杯やりながらの作。「白雨」は激しいにわか雨。望湖楼は杭州の鳳凰山にあって西湖を見下ろす高殿。

銷夏詩(銷夏の詩)~袁枚

不著衣冠近年半
水雲深處抱花眠
平生自想無官樂
第一驕人六月天

衣冠を著(つ)けざること半年に近し
水雲深き處(ところ)花を抱(いだ)きて眠る
平生(へいぜい)自ら想う無官の楽しみ
第一に人に驕(おご)る六月の天

【解釈】
 官服や冠を着ける宮仕えを辞めて半年近く、水や雲の大自然の中で、花に囲まれて眠る。日頃から夢想していた無官の気楽さ。今、何よりも人に自慢したいのは、この六月の炎天下での我が暮らし。

(注)題名の「銷夏」は暑さをしのぐという意味。作者は各地の知事を務め、38歳で引退、南京郊外で80過ぎまで悠々自適の生活を過ごした。

楓橋夜泊(ふうきょうやはく)~張継

月落烏啼霜満天
江楓漁火対愁眠
姑蘇城外寒山寺
夜半鐘声到客船

月落ち烏(からす)啼(な)いて 霜(しも)天に満つ
江楓(こうふう)の漁火(ぎょか)愁眠(しゅうみん)に対す
姑蘇城外(こそじょうがい)の寒山寺(かんざんじ)
夜半の鐘声(しょうせい)客船(かくせん)に到(いた)る

【解釈】
 月が沈み、烏が鳴き、霜の降りる気配が天に満ちている。点々と見える漁り火が川岸の楓(かえで)の木々を照らし、うつらうつらとして眠れない私の目に映る。そんなところへ、姑蘇城外の寒山寺から、夜半を告げる鐘の音が、私の乗っている舟にまで聞こえてきた。

(注)「江楓」は「江村」(川沿いの村)とする説もある。「姑蘇城」は蘇州のことで、城壁に囲まれていた。

春暁(しゅんぎょう)~孟浩然

春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少

春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚えず
処処(しょしょ)啼鳥(ていちょう)を聞く
夜来(やらい)風雨(ふうう)の声
花落つること知る多少(たしょう)ぞ

【解釈】
 春の朝、すっかり寝坊をしてしまった。あちらこちらから鳥のさえずりが聞こえてくる。昨夜の雨風はひどかったが、花はどれほど散ってしまっただろうか。

(注)「処処」は「あちらこちら」。第4句は「さぞ多くの花が散ってしまったことだろう」との解釈もある。

春夜喜雨(春夜雨を喜ぶ)~杜甫

好雨知時節
当春乃発生
随風潜入夜
潤物細無声
野径雲倶黒
江船火獨明
暁看紅湿處
花重錦官城

好雨(こうう)時節(じせつ)を知り
春に当って乃(すなわ)ち発生す
風に随(したが)いて潜(ひそや)かに夜に入(い)り
物を潤(うるお)して細(こまや)かにして声無し
野径(やけい)雲は倶(とも)に黒く
江船(こうせん)火は独(ひと)り明らかなり
暁(あかつき)に紅(くれない)の湿(しめ)れる処(ところ)を看(み)れば
花は錦官城(きんかんじょう)に重からん

【解釈】
 好い雨というのは、降るべき時節を心得ていて、春が来るとすぐに降り始める。風に吹かれてひっそりと夜に降り始め、細やかに音もたてず、万物を潤す。野の小道は雲と同様に黒々としており、川を行く船の灯だけが明々と見える。明け方、赤くしっとりと霞んだところを見ると、錦官城の花も雨に濡れて重たげである。

(注)最後の句の「錦官城」は成都の別名。



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がんばる高校生のための文系の資料・問題集。

おもな詩人

陶淵明(とうえんめい)
 六朝東晋の詩人・文章家。清潔な人柄から靖節先生と呼ばれた。地主階級に生まれ、幾度か役人生活をする。情熱を内に秘めた平易簡明な詩文は、杜甫や蘇軾など後代多くの文人に愛され、隠逸詩人と称された。

李白(りはく)
 盛唐の詩人。唐代のみならず中国詩歌史上で同時代の杜甫とともに最高の存在とされる。奔放で変幻自在な詩風から、後世に「詩仙」と称される。唐代詩人のなかでは珍しく科挙の試験を受けていない。

杜甫(とほ)
 盛唐の詩人。同時代の李白と並び最高の存在とされ、「詩聖」と称される。少年時代から詩をよくしたが科挙には及第できず、貧困と不遇をかこち続けた。わが国の遣唐使の阿倍仲麻呂と同じ年に亡くなった。

韓愈(かんゆ)
 中唐の文章家・詩人。24歳で科挙に合格。李白・杜甫・白居易とともに「李杜韓白」と並称され、唐の四大詩人挙げられている。散文の文体改革を行い、また柳宗元とともに古文復興運動に努めた。

蘇軾(そしょく)
 北宋の政治家・文学者。北宋随一の文人で、21歳で科挙に合格。その生涯は政争の渦中にあって波瀾に富むが、持ち前の明朗闊達さを失うことのなかった強靭で博大な人格は、多くの人々に敬慕された。詞・書・画にも一流の才能を発揮した。

漢詩の種類

古体詩
 平仄はすべて不定
四言古詩
(一句の字数)四字
(句数)不定
(押韻)自由
五言古詩
(一句の字数)五字
(句数)不定
(押韻)偶数句末
七言古詩
(一句の字数)七字
(句数)不定
(押韻)第一句・偶数句末
楽府
(一句の字数)不定
(句数)不定
(押韻)自由
 
近体詩(唐代以降)
 平仄はすべて一定
五言律詩
(一句の字数)五字
(句数)八句
(押韻)偶数句末
七言律詩
(一句の字数)七字
(句数)八句
(押韻)第一句・偶数句末
五言拝律
(一句の字数)五字
(句数)十句以上
(押韻)偶数句末
七言拝律
(一句の字数)七字
(句数)十句以上
(押韻)第一句・偶数句末
五言絶句
(一句の字数)五字
(句数)四句
(押韻)偶数句末
七言絶句
(一句の字数)七字
(句数)四句
(押韻)第一句・偶数句末

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