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ベートーヴェンの交響曲第5番

 クラシック音楽ファンならずとも、誰もが知っているベートーヴェンの交響曲第5番「運命」。あの単純ともいえるダダダダーンの出だし、演奏する側、とくに指揮者にとってはなかなか一筋縄ではいかないそうです。金聖響さんによれば、

―― まず最初にフォルテッシモで♪ダダダダーン! ダダダダーン!と4つの音を2度、弦楽器とクラリネットで鳴り響かせますが、まず、この音を合わせるのが難しい。至難の業です。カラヤンがベルリン・フィルを振った映像でも、イチ、ニ、サン、ン♪ダダダダーンと、3回棒を振ってからオーケストラに音を出させています。バーンスタインがウィーン・フィルを振った映像でも、「イチッ、ニッ、ン♪ダダダダーン」と、音の出る前に2度振っています。ここで「ン」といったのは、最初の音が出る前に、八分休符があるからですが、その前に指揮棒を1回振り上げるだけでダダダダーンと、すぐにオーケストラが入るのは無理でしょうね。それでは、絶対に揃いません。――

 そういうもんなんですねー。素人は全く気にせずに聴いているわけですが、聴くと弾くとでは大違い。こうした実際の演奏者の方のお話ってのは、なかなか興味深いものです。

 ところで、同じく金聖響さんのお話ですが、ずいぶん前に、ある大女優に「好きなクラシック音楽は何ですか?」と尋ねたら、「運命交響曲です」との答えが返ってきて、ずいぶん驚いたそうです。その大女優とは、吉永小百合さんです。金聖響さんがなぜ驚いたかというと、ふつうは、好きなクラシック音楽は何ですか?と聞いても、「運命交響曲」との答えはまず返ってこないそうです。あまりに有名すぎる曲なので、答える側が恥ずかしく思ってしまう。

 それを吉永さんは、何のてらいもためらいもなく「好きな曲は運命です」と堂々と答えた。金聖響さんは、さすがに大女優の吉永さんだ、自分自身に自信があるからこその答えだ、と、たいへん感じ入ったそうです。


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