曹松
沢国江山入戦図
生民何計楽樵蘇
憑君莫話封侯事
一将功成万骨枯
沢国(たくこく)の江山(こうざん)戦図(せんと)に入(い)る
生民(せいみん)何の計あってか樵蘇(しょうそ)を楽しまん
君に憑(ねが)う話(かた)る莫(な)かれ封侯(ほうこう)の事(こと)を
一将(いっしょう)功(こう)成って万骨(ばんこつ)枯(か)る
【訳】
この豊かな一帯の水郷も川も山も、みな戦乱のために荒れてしまい、人々は日常の生活を楽しむ手だても失ってしまった。どうぞ、あなたにお願いします。戦場で手柄を立てて出世しようなどと言わないで下さい。一人の将軍が戦功を立てた陰で、数多くの兵卒の骨が戦場に散って朽ち果てていくのですから。
【解説】
結句の「一将功成って万骨枯る」の語で有名な詩です。作者の曹松は若くして戦乱から逃れ、職につけずに各地を放浪した人物です。 〈己亥(きがい)〉は西暦879年。このころ唐王朝は衰退し、大規模な反乱(黄巣の乱)が起きている最中でした。この詩は、争乱によって人民が塗炭の苦しみをしていることを思い、反乱者への批判を詠っているものです。
七言絶句。〈沢国〉は川や沼などが多い水郷地帯。〈戦図〉は戦場。〈生民〉は人民。〈樵蘇〉は生活のための営み。「樵」はきこり、「蘇」は草刈りのこと。〈憑君〉は、君(将軍)にお願いする。〈封侯〉は戦功を立てて王侯に取り立てられること。〈万骨〉は多くの人々の命。
※黄巣の乱
875年夏、黄河下流の山東省・河南省一帯で相次いで起こった農民反乱。その年、この地域にイナゴが大発生し、その大群が飛ぶと日中も暗く、飛び去ったあとは緑の物はすべて食べ尽くされ赤土だけが残ったという。そのような中で、塩の密売人である王仙芝と黄巣らが、流民を傘下に集めて挙兵。彼らは塩専売制のもとで密売によって利益を得ていたが、唐政府が密売摘発を強化したことに反発して反乱を起こしたのだった。
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