乃木希典
山川草木轉荒涼
十里風腥新戰場
征馬不前人不語
金州城外立斜陽
山川草木(さんせんそうもく) 転(うた)た荒涼(こうりょう)
十里(じゅうり)風(かぜ)腥(なまぐさ)し 新戦場(しんせんじょう)
征馬(せいば)前(すす)まず 人語らず
金州城外(きんしゅうじょうがい) 斜陽(しゃよう)に立つ
【訳】
山も川も、草も木も、ひたすら荒れ果てて寂しい。つい先日戦いがあったこの場所では、十里も先まで血なまぐさい風が吹いている。
軍馬は歩みを止め、将兵たちは押し黙っている。夕陽が傾くこの金州城外に、私はただ立ちつくす。
【解説】
陸軍大将の乃木希典が、日露戦争で第3軍の司令官として旅順の攻略に向かう途中、金州で詠んだ詩です。金州の南山は日露両軍が死闘をくりかえした激戦地で、乃木は勇敢に戦った兵士を讃え、また、若くして散った英霊を弔い、この詩を詠じました。彼の長男勝典(かつすけ)もここで戦死しています。日本軍はここから南下して旅順を攻撃しました。
七言絶句。「涼・場・陽」で韻を踏んでいます。〈金州〉は遼東半島にある、旅順の北方の町。旅順港背後の要衝の地。〈轉〉はひたすら、いよいよの意。〈征馬〉は軍馬。〈斜陽〉は夕陽。
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