西郷隆盛
幾歴辛酸志始堅
丈夫玉碎恥甎全
我家遺法人知否
不為兒孫買美田
幾(いく)たびか辛酸(しんさん)を歴(へ)て 志(こころざし)始めて堅(かた)し
丈夫(じょうふ)は玉碎(ぎょくさい)するも甎全(せんぜん)を恥ず
我が家の遺法(いほう)人知るや否(いな)や
児孫(じそん)の為(ため)に美田(びでん)を買わず
【訳】
幾度も辛酸をなめて、始めて志が堅くなる。真の男子たる者は、潔く玉と砕けることを本懐とし、なすこともなく生きながらえるのを恥とする。我が家に伝わる家訓を、人は知っているだろうか。それは、子孫のためにといって財産を残さないということである。
【解説】
西郷隆盛が大久保利通に宛てた書簡にある詩です。題の『偶成』はたまたま出来上がったという意で、『偶感』とするものもあります。「児孫の為に美田を買わず」の言葉はあまりに有名です。
七言絶句。「堅・全・田」で韻を踏んでいます。〈丈夫〉は立派な男子。〈甎全〉の甎は敷き瓦、全は安全、つまり瓦のようにつまらないものになって安全に生きること。〈玉砕〉は玉が砕けるように潔く死ぬこと。中国に「瓦全より玉砕を選ぶ」という諺があります。〈兒孫〉は子孫、子と孫。〈美田〉は肥えた田畑。ここは広く財産を指します。
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