本文へスキップ

クラシック音楽が分かるとは?

 よく「クラシック音楽が分かる」とか「分からない」などという言い方がされますね。ベートーヴェンの曲が分かるとか、難しくてよく分からないとか。この「分かる」「分からない」とは、いったいどういう意味なのか。長らく私も、分かっているようで分からないでおりました。そうしたら、指揮者の金聖響さんが著書の中でこんなふうにおっしゃっています。

 ―― ベートーヴェンの『運命交響曲』がハ短調で始まりハ長調で終わる交響曲で、アレグロ、アンダンテ、スケルツォ、フィナーレと続く4楽章構成で、スペインで反ナポレオンの蜂起が起こったころに完成した作品で・・・・・・といった知識を身につけると、ベートーヴェンの『交響曲第5番ハ短調作品67』を「ワカッタ」あるいは「ワカルヨウニナッタ」といえるのでしょうか?

 音楽の構造を分析して知ることもひとつの方法でしょうし、歴史的背景を知ることも「ワカッタ」ような気持ちになる手助けをしてくれます。が、「音楽をワカル」ということは、突き詰めて考えると、その音楽に「馴染む」ことであり、「慣れる」ことだといえるのではないでしょうか。

 サザン・オールスターズが1978年に『勝手にシンドバッド』でデビューしたとき、多くの年輩評論家は「ナンダ、コレは!?」と驚き、「ワケがワカラン」という人が多かったといいます。「胸騒ぎの腰つき」という歌詞も歌い方(発音)も、過去には存在しない耳慣れないモノだったから「ワカラン」となったのでしょう。ビートルズやエルビス・プレスリーがデビューしたときも、同様の「ワカラン」という強い拒絶反応が、お年寄りを中心に沸き起こったといいます。お年寄りというのは、過去に長年親しんできた耳慣れた音楽の印象を強く記憶に残しているものですからね。――


 何のことはない、つまり「分かる」とは、ほかでもない「馴染む」「慣れる」ことなんですよ。それまで小難しく考え、理屈をこねて、プレッシャーさえも感じていましたが、実は単純なことなんですね。金さんの言葉に、何だかとても救われる思いがいたしました。

音楽史概要

 クラシック音楽は「古典的な音楽」を意味し、具体的には17世紀〜20世紀前半までのヨーロッパを中心とした西洋音楽を指します。その歴史はおよそ400年にもおよび、楽器の発達や時代背景の移り変わりによって、クラシック音楽も年代ごとに名称がついて分類されています。

@ルネサンス音楽
 14〜16世紀の音楽。和音で音が進んでいく「ポリフォニー」が特徴。楽譜は大まかで、宗教的な合唱曲が多い。主な作曲家は、オケゲム、ジョスカン・デ・プレ、パレストリーナなど。

Aバロック音楽
 16世紀末〜18世紀前半の音楽で、絶対王政の時代にほぼ重なる。彫刻や絵画等と同じように速度や強弱、音色などに対比があり、劇的な感情の表出を特徴とした音楽。オペラのジャンルが盛んになる。おもな作曲家は、ヴィヴァルディ、リュリ、ラモー、テレマン、バッハ、ヘンデルなど。

B古典派
 18世紀中ごろ〜19世紀初頭の音楽。主旋律に伴奏があるというメロディー重視の音楽(モノフォニー)。この時代に、今のような交響曲、協奏曲、四重奏曲、ソナタなどのジャンルが完成。代表的な作曲家は、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン。

Cロマン派(前期)
 19世紀全般の音楽である「ロマン派」のうち前半の音楽。古典派の均整美から発展し、作曲家の個性や感情が前面に出てくるようになる。ロマン派の音楽はベートーヴェンによって切り開かれ、ウェーバー、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ベルリオーズ、ショパン、リストらによって推し進められる。

Dロマン派(後期)
 ロマン派前期からさらに規模が拡大、技法も複雑化する。おもな作曲家は、ブラームス、ワーグナー、ブルックナー、マーラー、リヒャルト・シュトラウス、ヴェルディ、プッチーニ、チャイコフスキー、ドボルザークなど。

E近代音楽
 19世紀末から第二次世界大戦までの音楽。ドビュッシー、ラヴェル、シェーンベルク、ストラヴィンスキー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、バルトークなど。
 

【PR】


佐渡裕さんによる高校・吹奏楽部の指導

 いつかのテレビ番組で、指揮者の佐渡裕さんが、ある高校の吹奏楽部の生徒たちに演奏指導をしている光景が放映されていました。プロの有名指揮者を前に、緊張して力いっぱい楽器を吹こうとする生徒たち。その音をほんの少し聴いただけの佐渡さんは、「決して大きな音を鳴らそうとする必要はない。力を抜いて吹いてごらん」とアドバイスします。するとどうでしょう、彼らの奏でる音が、たちまちふくよかで艶のある音色に変貌したのです。

 そのほか幾つかのアドバイスも加え、わずかな時間の指導にもかかわらず、それまでと見違える、いや聴き違えるほどにレベルアップした高校生たちの演奏。決して高度な技術を求めたわけではないのに、一聴してわかるほど、もう全然違って聴こえるんですからね。いやー、あらためて指揮者の役割の大きさに驚くとともに、やっぱりプロの見識、技量ってスゴイもんだなーと深く感動した次第です。

 佐渡さんが指導の最中に重ねて言っていた、「必ずしも力いっぱいが良いとは限らない」という言葉。これはですねー、吹奏楽の演奏に限った話ではないと思います。たとえばスポーツだったり仕事だったり、私たちがふだん行動しているいろんな場面に共通していえる、なかなか示唆に富んだお話だと思いますね。
 

【PR】

目次へ ↑このページの先頭へ

【PR】

HMV&BOOKS online

世界のオーケストラ
ランキング

1位
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
2位
バイエルン放送交響楽団
3位
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
4位
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
5位
シュターツカペレ・ドレスデン
6位
パリ管弦楽団
7位
シカゴ交響楽団
8位
ロンドン交響楽団
9位
マーラー室内管弦楽団
10位
ドイツ・カンマーフィルハーモニー

〜『レコード芸術』(2017)から

【PR】

デアゴスティーニ

ノートンストア

目次へ