ベートーヴェンが残した5つのピアノ協奏曲のうち最も人気があるのは第5番《皇帝》でしょうか。演奏機会も圧倒的に多いようです。ところが、19世紀には《第3番》が最も愛され、演奏される回数も多かったといいますし、日本でも戦後しばらくは《第3番》の人気が高かったそうです。時代によって人気の度合いも大きく変化するものなのですね。
《第3番》は、それまでの第1・2番からやや間隔が空き、《交響曲第3番》とほぼ同時期の1803年に完成した曲です。このときベートーヴェン33歳。着想から完成までの期間が長かったようで、練りに練って作られたということなのでしょう。前2作よりもベートーヴェンらしさが増していると感じるのは、『悲愴ソナタ』『運命交響曲』と同じハ短調という、ベートーヴェン的な調の採用にも起因しているのでしょうか。
第1楽章冒頭のオーケストラによる呈示部は延々と続き、ピアノ・ソロが登場するまで4分近くを要します。それ以降もオーケストラ・パートは充実しており、ピアノ協奏曲というより、ピアノが主役の交響曲といってもよいほど。まさに「シンフォニックなコンチェルト」の登場であり、ピアノ協奏曲の分野、さらには彼自身の創作にとっても、エポックメイキングな作品になったとされます。また、ベートーヴェンらしく壮大で記念碑的な構築物を彷彿させるような曲想を「英雄的様式」と呼ぶそうですが、それを打ち立てた作品ともいわれます。
私の愛聴盤は、エマールのピアノとアーノンクール指揮、ヨーロッパ室内管弦楽団による2000年の録音です(ピアノ協奏曲全集から)。このピアニストのことはそれまで全く知らなかったのですが、表情豊かといいますか陰影に富み、品位のある美音が煌めくように鳴り響きます。とてもよいです。大好きなアーノンクール指揮だからというので買ったのですが、相性もバッチリという感じで、実に「当たり!」でありましたよ。こういう予期せぬ出会いが楽しいんですよね、クラシック音楽って。
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