「優しい」ということ
キリスト教でいちばん大事なルールというのは「ゴールデンルール」といわれ、「何ごとでも他人からしてほしいと望むことを他人に対してもしなさい。自分が嫌だと思うことを他人にしてはいけません」ということだそうです。「マタイによる福音書」にも書かれているとか。
また、『論語』では、孔子の弟子が「一生行うべきことを、一言でいうと何でしょうか」と問うたのに対し、孔子は「それ恕(じょ)か、己の欲せざるところは、人に施すことなかれ」と答えています。「恕」とは相手を尊重する思いやりのことです。やはり洋の東西を問わず、そうした優しさが大事にされているんですね。
それから、レイモンド・チャンドラーの小説『プレイバック』の中に、謎の女が探偵のヒリップマロウに語りかける場面があります。
「あなたのように強い男が、どうしてそんなに優しくなれるの?」
「強くなければ生きていられない。優しくなければ、生きていく資格がない」
有名なセリフですが、私、つくづく思うんですね、もちろん何より「優しさ」は大切だけれども、やはり「強さ」に裏打ちされていなければ、ホントの優しさとは言えないんじゃないかと。そういえば、ローラも言っていましたよ。
「優しい人間には二種類いるの。『強いから優しい』人と、『弱いから優しいフリをしている』人と。見分けられるかな?」
って。こういうの、一人の人間だけの話ではなく、たとえば組織や国家などにもいえる話ではないでしょうかね。やはり、何を置いても、まず強くならなくてはならない。
カップめんの値段
ずいぶん前のお話になりますが、麻生太郎さんが首相だったころ(2008年9月〜2009年9月)、毎日新聞の『有権者 こう思う』という欄に、24歳の女性(無職)からの投書が載っていたことがあります。
「カップめんの値段を知らない麻生首相には驚いた。お金に困らず育った世襲政治家ではなく、一般人の感覚を持つ人に、政治家になってほしい」
当時、けっこう話題になり、麻生さんへの批判の種になったので、おぼえている方もいらっしゃると思いますが、そしたら、作家の曽野綾子さんがこういうふうに言ってましたよ。
「たかがカップめんの値段を知らないくらいで、総理を見下すものではないような気がする。総理は知っているが、この女性や私が知らないことの方がはるかに多いのだ。政治の大局さえ抑えていれば、カップめんの正確な値段くらい知らなくても大したことはないのが、総理というものだ。・・・」
それはそういうもんだろうと思います。そんな些末なことが、総理の評価の理由になるわけがない。まー24歳の女性に、国を統べるトップマネジメントの要諦が分からないのは無理もありません。しかし、今更ながら思うに、麻生さんって、ほかにも漢字を知らないとか、アニメおたくだとかいろいろ批判されていたけど、逆にそれぐらいしか隙がなかったってことじゃないでしょうかね。
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相手を引きつけるトーク術
商談やプレゼン、講演などのトーク術というのは、その出来不出来で格段に効果が違ってきますから、とても重要です。不肖私もあれこれ工夫しているつもりですが、なかなかうまくいきません。
ある本によれば、一瞬にして相手を虜にできる話ができる人には、ひとつの共通点があるといいます。それは、話の「つかみ」がきちんとできるということ。かといってネタのようなものを披露する必要はなく、聞き手と自分とで「共有できる話」で場を和ませるだけ。それも聞き手に添った内容にするのが大切ですって。
とくに講演やプレゼンでは、最初のうちは聞き手の脳は緊張しているので、まずは「つかみ」の話で相手の脳をほぐし、そこから本題へ持っていく。そうすれば聞き手の吸収率は格段に高くなり、理解度も増していくというのです。ずいぶんなるほどです。
それからもう一つ参考になったのが、トークのスピード。緊張もあってついつい早口になりがちですが、これがいけない。聞き手がそのスピードについていけなければ、内容が理解しきれずフラストレーションを抱いてしまいます。結果、「早口で何がいいたいのかわからない」と評価される。あまつさえ、一気に話すトークは、声のトーンも一本調子で抑揚がなくて退屈になります。
そこで著者は、ゆっくり、確実にトークの内容を聞き手に伝えるために大切なのは、ひとつひとつの文章(センテンス)を短く区切ることだといいます。例をあげているのは、「からだの健康のため、朝食には酢のものを食べることにしている」という話の説明です。
――「朝7時に起きたら、私は酢のものを食べているんですが、お酢のなかにはクエン酸という物質があるとのことで、膝や肩こりなどの疲労物質を分解してくれるので、毎日食べるようにしているんです」――
この文章を一気に話そうとすると、無意識のうちに早口になってしまうはず。これを次のように話す。
――「朝7時に起きたら酢のものを食べるようにしています。なぜなら、お酢のなかにはクエン酸が含まれているからです。クエン酸には腰や肩こりなどの疲労物質を分解してくれるパワーがあります。なので、私は毎日食べるようにしています」――
うーん、確かに、実にグッドですねー。
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