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発想標語

 素人ながらいろいろ勉強していますと、音楽用語のなかに「発想標語(発想記号)」というのがあるんですね。楽曲の演奏にあたり、その楽曲のイメージ(曲想)や表現方法を示すもので、五線譜の上に書かれています。いくら優秀な演奏家でも、オタマジャクシを見ただけでは、その曲を元気よく弾いたらいいのか静かに弾いたらいいのか分かりませんからね、それを分かりやすく言葉で示しているわけです。その中からいくつかご紹介しますと、

・agitato(アジタート)不安な 興奮した
・alla marcia(アッラマルチャ)行進曲風に
・amabile(アマービレ)愛らしく
・animato(アニマート)生き生きと
・calando(カランド)次第に弱く
・calmato(カルマート)静かに
・cantabile(カンタービレ)歌うように
・capriccioso(カプリチョーソ)気まぐれに
・comodo(コモド)気楽に
・con espressione(コンエスプレッシオーネ)表情豊かに
・con fuoco(コンフオーコ)火のように、生き生きと
・con moto(コンモート)動きをつけて
・deciso(デチーゾ)きっぱりと はっきりと
・dolce(ドルチェ)甘美に
・energico(エネルジーコ)力強く
・giocoso(ジョコーソ)楽しげに
・grandioso(グランディオーソ)壮大に
・lamentabile(ラメンタービレ)哀れに
・legato(レガート)滑らかに
・leggiero(レッジェーロ)軽やかに
・maestoso(マエストーソ)荘重に
・marcato(マルカート)はっきりと
・minaccioso(ミナッチョーゾ)脅かすように
・morendo(モレンド)絶え入りそうに
・nobile(ノービレ)上品に
・perdendosi(ペレデンドシ)消え入るように
・pesante(ペザンテ)重々しく
・risoluto(リゾルート)決然と
・ritmico(リトミコ)律動的に 
・semplice(センプリチェ)単純に 素朴に
・serioso(セリオーソ)真面目に
・spiritoso(スピリトーソ)精神を込めて
・tranquillo(トランクィッロ)静かに
・trionfante(トリオンファンテ)勝ち誇って 堂々と

 ほかにもたくさんあって、とても書ききれません。こんなにも細やかに曲想の違いを表現し分けるのかと驚かされます。しかも作曲家は既にある発想標語に拘る必要はなく、自分の言葉で自由につけることもできるそうです。しかし何という語彙の豊かさでありましょうか。これらの発想標語はイタリア語で書かれているのですが、なぜイタリア語かというと、記譜法が発達した時期のクラシック音楽先進国がイタリアだったからだそうです。

調性による曲の性格の違い

 「調性格論」というのがあるそうです。「16世紀以来《長調》は明るく、《短調》は暗い表現に適するとされ、また調号に《シャープ》をもつ調は高揚した気分を、《フラット》をもつ調は沈静した気分を表すことが多い。さらに種々の調はそれぞれ固有の性格をもつとされる」というものです。作曲家たちも、それらを踏まえたうえで調性を決めて曲を書いているといいます。

 そこで長短24ある各調性にどのような性格があるのか、いくつか挙げますと、おおよそ次のようなものだそうです。

  • ハ長調 力強い、堂々、神々しい、純粋
  • ニ長調 華やか、明るい、祝典的
  • 変ホ長調 英雄的
  • 変ロ長調 明るい愛、良心、希望
  • イ長調 愛を連想させる
  • ヘ長調 牧歌的、満足
  • イ短調 敬虔な女性らしさ、柔和
  • ト短調 不満、不愉快、恨み
  • ニ短調 悲痛、死を連想させる

 具体的な曲としては、ハ長調がモーツァルトの交響曲第41番《ジュピター》やベートーヴェンの交響曲第5番《運命》第4楽章、ニ長調がベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章、変ホ長調がベートーヴェンの交響曲第3番《英雄》、ピアノ協奏曲第5番《皇帝》、イ長調がモーツァルトのピアノ協奏曲第23番、クラリネット協奏曲、ヘ長調がベートーヴェンの交響曲第6番《田園》、ニ短調がモーツァルトのピアノ協奏曲第20番、レクイエムなどです。

 いかがでしょう、それぞれの曲と照らし合わせるとずいぶん「なるほどー」と思わされます。もっとも「調性格論」は合理的、科学的に説明がつくものではないそうですし、あれこれ議論も多いといいます。また、人それぞれに感じ方は違うはずですからね、100人が聴けば100とおりの感じ方があるはず。調性のイメージにあまり捉われる必要はないのかもしれません。 

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