于武陵
勧君金屈卮
満酌不須辞
花発多風雨
人生足別離
君に勧(すす)む金屈卮(きんくつし)
満酌(まんしゃく)辞(じ)するを須(もち)いず
花 発(ひら)けば風雨(ふうう)多し
人生 別離(べつり)足る
【訳】
さあ、このさかずきを受けてほしい。いっぱいに注いだこの酒を。遠慮は無しだ。花は開いたかと思うと、たちまち風雨に吹き散らされてしまう。人生も、会えばまたすぐに別れのときがやってくるのだ。
【解説】
人生の出会いと別れを嘆いた詩。ただし、その捉え方には、具体的な別れを惜しんでいるのか、それとも「人生に別れはつきもの、だから今この時を大切にしよう」と普遍なさまをうたっているのか、の二通りありそうです。なお、井伏鱒二による次の訳が有名です。「コノサカズキヲ
受ケテオクレ ドウゾナミナミト ツガシテオクレ ハナニアラシノ タトエモアルサ サヨナラダケガ 人生ダ」
五言絶句。「巵・辞・離」で韻を踏んでいます。〈金屈卮〉は取っ手がついた金属製の大型の杯。〈満酌〉は杯に酒をなみなみと注ぐこと。〈不須辞〉は辞退する必要がない意。〈足〉はとても多い意。
狭義の「漢詩」は、漢代(前202年~220年)に作られた詩を指しますが、日本では「和歌」に対して中国の詩全般を「漢詩」と言っています。また、これとは別に唐の時代の詩を「唐詩」と呼び、その詩の流れは、初唐・盛唐・中唐・晩唐の四つの時期に分けて考えられています。この時代に詩の形式はほぼ固まり、それまでの時代の詩を「古体詩」、唐の時代からの詩を「近体詩」と呼びます。科挙の試験に作詩が課せられたことから詩は隆盛し、黄金時代を迎えました。この詩が詠まれたのは晩唐の頃です。
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