『ノアの箱舟』といえば、旧約聖書に出てくる有名な物語です。『創世記』6〜9章には、大洪水が地球全土を襲い、ノアが神の命令で造った箱舟に乗っていたものだけが生きのびたというお話が書かれています。
人々が神に対する信仰を棄てて堕落した生活を送っているとき、ノアという男だけが信仰を守って敬虔な生活をしていました。神は、信仰を忘れた人類を滅ぼそうと思いたちますが、まじめなノアだけは助けようとしました。そしてある日、神はノアに対して箱舟をつくれと告げます。ノアは何が何だか分からないままお告げに従い、家族みんなで箱舟を造り始めます。
神は、箱舟の長さや幅についても細かく指示をし、ノアはそのとおりに造っていきました。他の人たちはそんなノアを見て、「バカなことをしている」と嘲りますが、舟が完成したところへ大洪水がやってきました。このとき、箱舟にはノアのほかに妻、3人の息子とその妻たち、そしてあらゆる種類の動物たちが”つがい”で乗っていて、彼らだけが助かったのです。
ノアは信仰の模範であり、箱舟は信仰者の団体としての教会、大洪水は神の審判を象徴するものと考えられていますが、実は聖書以外の伝承でも、大洪水にふれているものは他にも多くあります。ギリシア神話にも聖書と似た記述が見られますし、さらに南アジアや北・中央・南アメリカの先住民、ポリネシアの先住民の民間伝承や伝説にも、大洪水の物語が出てきます。前2000年以降のバビロニアの物語である『ギルガメシュ叙事詩』もその一つで、これがノアの洪水物語の原型と考えられています。
キリスト教を信仰するヨーロッパ人たちは、聖書に書いてあることは真実の物語と考えていましたが、『ギルガメシュ叙事詩』の発見によって、旧約聖書が成立する1000年以上も前に、その元の話があったと分かったのです。そして、実際にバビロニアの遺跡発掘が進んでいくと、彼らの都市国家が、実際に大洪水に見舞われていることも明らかになってきました。
これは、ティグリス・ユーフラテス河の氾濫に苦しめられた記憶が、しだいに大洪水の神話物語に発展したものだといわれます。しかし、他に興味深い説を唱えている人もいます。ある時期、地球の地軸がグラッとずれて、それまで極地だったところの氷が一斉に溶け出して大洪水が起こり、それまでの人類の歴史が終わってしまったというものです。『ノアの箱舟』と似た伝説が地球のあちこちにあるのはその証拠だそうで、南極大陸の厚い氷の下には文明社会の痕跡が残っているはずだといいます。
実際、南極大陸が発見されるよりもずっと前につくられたとみられる大陸の地図が見つかったという話には、ずいぶん驚かされます。また「オーパーツ」という、昔あったとは考えられない、たとえば今のジェット機の模型のようなものが見つかっているのも、この説によれば説明がつくんだそうです。実に興味深いお話ですねー。
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