スピーカーの設置方法には、左右のスピーカーを平行に置く方法と、内側に向けて置く方法とがありますね。ほかにも、これは学生時代に友人がやっていた方法ですが、外側に向けて置いているのを見たことがあります。ずいぶん珍しく思ったものですが、皆さまはどんな置き方をなさっているでしょうか。それぞれにメリットの違いがあり、たとえば平行だと音の広がりが大きくなるとか、内側に向けると定位が正確になり壁の影響を受けにくくなる、とか。
私の場合は、内側に向けて置いています。所有しているスピーカーの取扱説明書に「リスニングポジションに対して少し内側に向け設置することにより、効果的なステレオ再生ができます」と書かれてあるので、それに単純・素直に従っただけです。同説明書には他にも「変形タイプの部屋や、部屋に障害物がある場合、必要に応じてスピーカーの位置や角度を変えたり、左右のスピーカーを逆の位置に設置したりすることで効果的なステレオ再生をお楽しみいただけます」とあります。左右を逆にするなんて、どんなケースなんでしょうかね。
ところで、内側に向けて置く方法は、平行に置く場合に比べて難しいというか、角度の調整にけっこう神経を使います。左右の角度をうまく調整しないと、きっちりした音像の定位が得られないからです。音像が左寄りだと感じたら、反対側の右のスピーカーを内振りにするといった調整が必要になります。このへんの作業はけっこう繊細でして、ほんの少し動かしただけでけっこう変化しますから、決していい加減にはできません。
そこでハイレベルなマニアの人たちは、「レーザー墨出し器」なる武器を用いて、それこそ1ミリ精度で測って設置していますね。そうした正確な調整の重要性や必要性を強く説いておられるものだから、実は私も同じような機器を買って試したことがあります。しかし、今一つ使いこなす技術力と根気が伴わず、またスピーカーもやたら重いので、途中であきらめた次第です。まだまだ修行が足らないようです。
ただ、やっている途中で疑問に思いましたのが、スピーカーからの「直接音」に関する調整はそれでよいとしても、部屋の状況によってさまざまに発生する「間接音」はどうしたらよいのか、ということです。完全に前後左右上下が対称な部屋ならともかく、ただでさえ室内には色んな障害物(反射物)がありますし、前述の取扱説明書にあったように、部屋の形や環境によって置き方を変える必要があるのであれば、「レーザー墨出し器」による調整など意味をなさないケースも出てくるでしょう。
わざわざ「レーザー墨出し器」を使うのは、まずは「直接音」の物理的な正確さ、つまり計測上の「焦点合わせ」からスタートし、次の段階として「間接音」に関わる部屋の音響の具合を調整していくというプロセスを尊重しているのかもしれません。それはそれで理解できるのですが、しかし、間接音となると、室内にある調度品など全ての物をミリ単位で調整するなど不可能ですから、どうやってもアバウトにならざるを得ないのではありますまいか。
とすれば、片方にミリ単位の正確さを求めながら、もう片方がアバウトであることに、どのような意味があるのか分からなくなってきます。私たちは、常に直接音と間接音を同時に聴いているのであって、直接音のみを明確に抽出、あるいは区別して聴くことはできないからです。しかも、「オーディオの音の半分は部屋が作る」といわれるほどに、音響におよぼす間接音の影響度合いは極めて大きいわけです。100%の無響音室でもない限り、スピーカーをミリ単位で合わせなければならないという理屈は成り立たないように思うのですが・・・。
そんなふうに考えてきますと、左右のスピーカーの位置調整が大切であるのは確かであるものの、さすがにそこまで精緻にするのには、あまり意義を見出せないところです。それに、どうしてもその必要があるなら、リスニングポジションすなわち耳の位置もミリ単位で定め、微動だにしてはならないことになりませんでしょうか。これが映像の場合だと、確かに正確に焦点を合わせる必要はあり、また、焦点さえ合えば、どこから見てもハッキリ見えるわけですが、音となると・・・。
ここまで、まことに得手勝手な独りよがりの感想・意見であり、ミリを極めたスピーカーの位置合わせをしている方々からは、大いなる反論を浴びそうです。しかし、私としては、考えれば考えるほどに、どうにも腑に落ちかねる部分でして、また、ただひたすら「重要」「必要」と言われるばかりで、こうした疑問に言及して解決してくれる論も見当たらないものですから。
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