そのほかの言葉
■ 藹々(あいあい)
おだやかなようす。打ち解けたようす。草木がさかんに茂っているようす。
■ 相合傘(あいあいがさ)
一本の傘に男と女が二人で入ること。
■ 逢引(あいびき)
愛し合う男女が、人目を忍んで逢うこと。
■ あえか
弱々しく、幼いかわいらしさあるさま。いかにもはかなげに見えるさま。〔用例〕彼女のようなあえかな女性には会ったことがない。
■ 青海原(あおうなばら)
青々とした広い海。
■ 購(あがな)う
つぐなう。埋め合わせをする。〔用例〕罪を購う。
■ 明け暮れ
「夜明けと夕暮れ」が転じて、日々、毎日、また、明けても暮れても、いつも。〔用例〕仕事だけに明け暮れする毎日は、味気ない。
■ 朝な夕な
毎朝毎夕。いつも。常に。〔用例〕朝な夕な般若心経を唱える。
■ 朝ぼらけ
夜明け方の、空がほんのりと明るくなったころ。もとは「朝おぼろ明け」。
■ 汗みずく
汗にぐっしょり濡れたようす。汗みどろ。漢字で書くと「汗水漬」。
■ あだ情け
かりそめの情け。
■ あたら
惜しいことに。むざむざ。〔用例〕あたら若い命を捨てる。
■ あっぱれ
感動して褒め称える気持ちを表す言葉。漢字で書くと「天晴」。
■ 艶姿(あですがた)
女性の美しく色っぽい姿。
■ 当て所(ど)ない
目当てや頼りとするところがない。〔用例〕当て所なく、夜の都会をさまよった。
■ あながち
必ずしも。まんざら。〔用例〕あながち悪いとはいえない。
■ 数多(あまた)
数が多くあること。たくさん。〔用例〕数多の苦難を乗り越える。
■ 天つ乙女(あまつおとめ)
天に住む乙女、すなわち天女のこと。「天つ」の「つ」は格助詞で、「天の」という意味。
■ あまつさえ
その上さらに。あろうことか。おまけに。〔用例〕折からの大雪、あまつさえ車が故障してしまった。
■ あまねく
広く。一般に。〔用例〕世間にあまねく知れ渡る。
■ 天(あめ)が下
この国土。日本中。空の下。
■ あやなす
美しい模様をつくる。美しく彩る。うまく扱う。〔用例〕錦あやなす木々。多くの男性をあやなした経験。
■ あらずもがな
あってほしくない。ないほうがよい。〔用例〕あらずもがなの終章。
■ ありてい
ありのまま。事実のまま。漢字で書くと「有体」または「有態」。〔用例〕ありていに言う。
■ 案に違(たが)う
予想していたことや思案していたことが的中しない。〔用例〕案に違う試合展開になってきた。
■ 言い知れぬ
言うに言われない。何とも言えない〔用例〕言い知れぬ寂しさを覚える。
■ いかばかり
どれほど。どんなに。物事の数や程度の多さをおしはかる場合に用いる。〔用例〕悲しみはいかばかりかと思いやる。
■ いかんせん
どうしようもない。残念ながら。〔用例〕いかんせん、手遅れだ。
■ 生きとし生けるもの
この世に生を受けているものすべて。地上の全ての生き物。〔用例〕生きとし生けるものの権利は、神の前では平等だ。
■ 礎(いしずえ)
ものごとの基礎となるもの。家の柱の下にすえる土台。柱石。
■ 居住まい
座っている姿勢や態度。〔用例〕居住まいを正す。
■ いそしむ
「励む」の雅語的表現。ただ、単なる「励む」とはニュアンスが異なり、いそいそと仕事や勉強に取り組むようす。そのことに何か喜びを見出しているようすがうかがえる表現。
■ 幼(いと)けない
幼い。あどけない。〔用例〕幼い子どもたちを残しては行けない。
■ いとど
いっそう。ますます。〔用例〕やさしい言葉をかけられ、いとど寂しさが募ってきた。
■ 暇乞い(いとまごい)
別れを告げること。辞めたいと申し出ること。
■ 今を時めく
よい時勢にめぐりあい、今が最高の状態にあること。〔用例〕たちまちのうちに、今を時めく人気歌手となる。
■ いみじくも
非常にうまく。適切に。〔用例〕暑さ寒さも彼岸まで、とはいみじくも言ったものだ。
■ いやさか
いよいよ栄えること。漢字で書くと「弥栄」。〔用例〕母国のいやさかを祈る。
■ いやしくも
仮にも。少なくとも。〔用例〕いやしくも人の上に立つ者ならば、そのようなことはすべきでない。
もしも。万一。〔用例〕いやしくもこれが現実なら、早急に手を打つべきだ。
■ 言わずもがな
言うまでもない。もちろん。〔用例〕英悟は言わずもがな、フランス語も話す。
言わないでくれるといい。言わないほうがいい。〔用例〕言わずもがなのことを言う。
■ いわんや
なおさら。まして。文末に「をや」をつけて、「大人でさえ難しいのに、いわんや子供においてをやだ。
■ 堆(うずたか)い
積み重なって高く盛り上がっている。〔用例〕堆く積もった土砂。
高貴である。高慢である。
■ うたかた
水に浮かぶあわ。(水に浮かぶあわのように)消えやすくはかないこと。
■ うたた
いよいよ。ますます。〔用例〕うたた同情の念に堪えない。
■ 諾(うべな)う
もっともなことであると同意する。〔用例〕彼の意見を諾う人が多かった。
■ うらうら
よく晴れて暖かくのどかなようす。
■ おうち
あなた。うちは私のことだが、「お」がつくと対称代名詞になりあなたの意。今ではほとんど聞けなくなったが、大阪の古い仕舞屋などの上品なおばあちゃんやおじいちゃんが使っていた言葉。
■ 奥ゆかしい
奥にひそむものに強く心がひかれる。さらによく知りたい。深みと品位があって、心が引かれる。〔用例〕奥ゆかしい女性が少なくなった。
■ おしなべて
全体にわたって。一様に。概して。〔用例〕今年の稲はおしなべて出来がいいようだ。
■ 遠近(おちこち)
あちらこちら。ここかしこ。〔用例〕鶏の声が遠近に聞こえる。
■ 御目文字(おめもじ)
お目にかかることをいう女性語。〔用例〕いちど御目文字いたしたく・・・。
■ 思い半ばに過ぐ
考えてみて思い当たることが多い。おおよそのことは分かる。思い当たることや想像できることが多い場合に使う言葉。〔用例〕彼の言動を考えると、このような結果になったのは思い半ばに過ぎるものがある。
■ 思いなしか
そう思ってみると、そんな気がする。〔用例〕思いなしか、今日の彼は元気がなかった。
■ 面映(おもはゆ)い
恥ずかしい。照れくさい。
■ 折節(おりふし)
その時々。その場合場合。〔用例〕折節の思いを日記に綴る。
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■ 垣間(かいま)見る
物陰からこっそりとのぞき見る。ちらっと見る。〔用例〕大人の世界を垣間見る。
■ がえんずる
承諾する。肯定する。もとは漢文の「不肯」を訓読みした「かへにす」から来た言葉で、音と意味が転じて現在の意味になった。
■ かかずらう
かかわりあいを持つ。かかわりがあって離れられない状態になる。関係する。〔用例〕後ろ向きの仕事ばかりにかかずらっていられない。
■ 可及的(かきゅうてき)
できるだけ。なるべく。〔用例〕可及的速やかに提出せよ。
■ 姦(かしま)しい
やかましい。耳障りでうるさい。〔用例〕女三人寄れば姦しい。
■ 予言(かねごと)
あらかじめ言っておくこと。約束。
■ 仮初(かりそめ)
その場限りで一時的なこと。〔用例〕仮初の恋。
■ 川明かり
辺りが暗いなかで川の水面が反射して明るく見えること。
■ 可愛い訛(なま)り
京都の女性が話す京都弁のこと。
■ 鑑(かんが)みる
照らし合わせて考えること。「鑑」は鏡と同じ字源で、映して見ることから、手本になるという意味が生じた。〔用例〕状況に鑑みて決断する。
■ 萌(きざ)す
ものごとが起こり始まろうとする。草木が芽生える。
■絆(きずな)
絶ち難い、人と人との結びつき。一体感。
■ 生粋(きっすい)
まじりけがなく、純粋なこと。その人の性質などが何処からみても言われる通りで、そのもの以外の何ものでもないこと。〔用例〕生粋の江戸っ子。
■ きらら
雲母(うんも)。
■ 草枕(くさまくら)
草を敷いて仮の枕にすることから、旅寝をすること。また、旅そのもの。〔用例〕あてどない草枕も、たまにはいいものだ。
■ 草分け
ある物事を初めて行うこと。また、その人。創始者。〔用例〕わが社は、この業界では草分け的存在だ。
■ 件(くだん)の
前に述べたこと。例の。いつものこと。例のもの。〔用例〕件の要件で話し合いたい。
■ 暗(く)れ惑う
どうしたらよいか分からず、途方に暮れる。悲しみのために心がふさいで思案に迷う。
■ 気色ばむ
怒りや不満の気持ちが外に現れる。むっとして顔色を変える。〔用例〕気色ばんで、席を立つ。
■ 群青(ぐんじょう)
あざやかな青色。
■ 懸想(けそう)
異性に思いを寄せること。〔用例〕秀吉は、お市の方に懸想した。
■ けだし
多分。おそらく。思うに。〔用例〕あなたの主張は、けだし正論だと思います。
■ 恋女房
恋愛して結婚した妻。
■ 来し方行く末
過ぎ去った日々と、これから先の日々。〔用例〕わが身の来し方行く末を思い悩む。
■ 言問う
話をする。問いかける。男女が言い交わす。〔用例〕言問う人もいない田舎道。
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■ 逆さ別れ
親より先に子が死ぬこと。〔用例〕逆さ別れほどの親不孝はない。
■ 細(さざ)れ
細かい。小さい。わざかな。〔用例〕細れ石。細(れ)波
■ 然(さ)のみ
それほど。これといって特に。〔用例〕然のみ困難ではない。
■ 然(さ)は然(さ)りながら
それはそうであるけれども。
■ さやか
見た目にはっきりしていること。〔用例〕秋来ぬと目にはさやかに見えねども・・・。
■ 冴(さ)やけさ
冷たく凍りつくとともに、澄み切って鮮やかなようす。〔用例〕月冴ゆる。
■ 冴(さ)ゆる
凛とした寒さが際立つ感じ、寒さがいっそう増す感じを表す語。
■ さようなら
別れを告げるあいさつ。「さようならば」の省略で、「そういう事情だからお暇します」の意味を含む。何かと余韻を残す話し言葉が多い日本語の典型といえるのでは。
■ さんざめく
ざわざわと騒ぐ。
■ 燦々(さんさん)
日の光が明るくきらきらと輝くようす。
■ 柵(しがらみ)
水の勢いを弱めるために水中に杭を打ち、それに木の枝や竹などをからませたもの。転じて、身にまとわりついて離れないもの。絶つことのできない関係。〔用例〕恋の柵。
■ 然るに
ところが。そうであるのに。〔用例〕金融緩和政策は実行された。然るに、それが中小零細企業に行き渡っていない。
■ 如(し)くは無し
比較するものがない。〔用例〕油断大敵、身の用心に如くは無し。
■ 静寂(しじま)
静まり返って、物音一つしないこと。〔用例〕夜の静寂。
■ 認(したた)める
文章を書く。整える。処置する。食事をする。〔用例〕手紙を認める。
■ しっぽり
しっとりと全体的に十分ぬれるさま。雨が静かに降るさま。男女間の愛情のこまやかなさま。〔用例〕春雨にしっぽりと濡れる。しっぽりと語り明かす。
■ しどけない
身なりなどがきちんとせず、だらしない。しまりがない様子。〔用例〕しどけないネグリジェ姿。
■ しとど
びっしょり濡れたようす。
■ 東雲(しののめ)
明け方。夜明け。元日の夜明けを「初東雲」という。
■ 忍び逢い
男女がこっそり逢うこと。逢引。
■ 仕舞屋(しもたや)
以前に商売をしていたが、やめてしまった家。商売をしていない一般の家。
■ 深々(しんしん)
夜が静かに更けていくようす。寒さが身にしみるようす。奥深いようす。
■ すずろ
心のおもむくままに物事をするさま。これといった当てもないさま。これといった根拠や理由のないさま。本意に反しているさま。風情がないさま。みやみ。やたら。
「すずろ言」はつまらない言葉。「すずろ歩き」は当てもなく歩き回ること。「すずろ心」は浮ついた心。
■ 昴(すばる)
おうし座にある星団の名前。「統一」という意味の「すばまる」という雅語が変化したもの。
■ すべからく
当然。本来ならば。「すべきであること」の約。下に「べし」が来る場合が多い。〔用例〕学生はすべからく勉強すべし。
■ 赤心
いつわりのない心。まごころ。誠意。「赤」は明らかという意味。〔用例〕彼の赤心が通じた。
■ せせらぎ
小川。漢字で書くと「細流」。
■ 是非も無い
いいも悪いもない。仕方がない。〔用例〕そういう事情なら是非も無い。
■ 先達(せんだつ)
他の人より先にその分野に進み、業績・経験を積んで他を導くこと。また、その人。先輩。〔用例〕先達に学ぶ。
■ 楚々(そそ)
清らかで美しいようす。あざやかなさま。〔用例〕楚々とした女性。
■ 卒爾(そつじ)ながら
「突然で失礼ですが」というときの決まり文句。〔用例〕卒爾ながらお尋ねいたします。
■ 其文字(そもじ)
あなた。そなた。
■ 忖度(そんたく)
他人の心を推しはかること。推察。推測。
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ちょっと美しい日本語
昔の人たちが残してくれた、美しい日本語の数々。 |