袁枚
不著衣冠近半年
水雲深處抱花眠
平生自想無官樂
第一驕人六月天
衣冠を著(つ)けざること半年に近し
水雲深き處(ところ)花を抱(いだ)きて眠る
平生(へいぜい)自ら想う無官の楽しみ
第一に人に驕(おご)る六月の天
【訳】
官服や冠を着ける宮仕えを辞めて半年近く、水や雲の大自然の中で、花に囲まれて眠る。日頃から夢想していた無官の気楽さ。今、何よりも人に自慢したいのは、この六月の炎天下での我が暮らし。
【解説】
作者は各地の知事を務め、38歳で引退、南京郊外で80過ぎまで悠々自適の生活を過ごしました。題名の「銷夏(しょうか)」は夏の暑さをしのぐという意味です。役人としての衣冠を脱ぎ捨て、蒸し暑いときには自然に抱かれて自適に過ごすことが何よりの自慢だと言っています。サラリーマンの憧れの境地であり、大いに理解できるものです。作者40歳の風流三昧の作とされますが、しかし、日本の幕末の朱子学者・斎藤拙堂は「狂奴の故態」といって強く批判しています。
七言絶句。「年・眠・天」で韻を踏んでいます。〈花〉は女性の意とする見方もあります。とすると、多くの女弟子に囲まれ、また妓女たちにかしずかれて過ごしていることを言っているのでしょうか。一介のサラリーマンでは、さすがにそこまでとは思いません。〈平生〉は日ごろ、つねづね。〈驕人〉は、他人に対して自慢する、威張る。〈六月〉は新暦7月ごろ。
【PR】
→目次へ
がんばれ高校生!
がんばる高校生のための文系の資料・問題集。 |
【PR】