『文選』
生年不満百
常懐千載憂
昼短苦夜長
何不秉燭遊
為楽当及時
何能待来茲
愚者愛惜費
但為後世嗤
仙人王子喬
難可与等期
生年(せいねん)は百に満たざるに
常(つね)に千載(せんざい)の憂(うれ)いを懐(いだ)く
昼(ひる)は短くして夜(よる)の長きに苦(くる)しむ
何(なん)ぞ燭(しょく)を秉(と)って遊ばざる
楽しみを為(な)すは当(まさ)に時(とき)に及(およ)ぶべし
何(なん)ぞ能(よ)く来茲(らいじ)を待たん
愚者(ぐしゃ)は費(ついえ)を愛惜(あいせき)し
但(た)だ後世(こうせい)の嗤(わらい)いと為(な)るのみ
仙人(せんにん)王子喬(おうしきょう)とは
与(とも)に期(き)を等(ひと)しうすべきこと難(かた)し
【訳】
人間が生きられるのは百年にも満たないのに、いつも千年先のことを思い悩んでいる。昼は短く、そして夜は長い。それならいっそ明かりを灯して夜通し遊べばよいではないか。人生を楽しむなら、時期を逃してはならない。どうして来年を待つことができようか、待っていられない。愚か者はわずかな出費を出し惜しんで遊ばず、後世の笑いとなるだけだ。仙人になった王子喬のようには長く生きられないのだ。
【解説】
『文選』は、六朝時代の梁の昭明太子が側近の文人らの協力を得て編集した詩文集です。30巻からなり、春秋戦国時代以降の800余の文章・詩・賦が収録されています。この詩は『古詩十九首』の其の十五で、限りある人生ならば、あれこれ悩んでいないで、その時その時を存分に楽しもう、と詠っています。豊年祭の場あたりで、酒を酌み交わしながら歌われた歌ではないかといわれます。
五言古詩。「憂・遊」と「滋・嗤・期」で韻を踏んでいます。〈生年〉はこの場合は一生、生きている間の意。〈千載憂〉は千年の先のことまで心配すること。〈秉燭〉は灯火を手に持つ。〈来茲〉は来年。〈愛惜〉は惜しいと思う、もったいないと思う。〈王子喬〉は周の霊王の太子・晋(しん)のこと。政治を顧みず、笙(しょう)を吹くのが好きで、道士に伴われて崇山に入り、ついに仙人になったといわれます。〈期〉は寿命。
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