朱熹
我来万里駕長風
絶壑層雲許盪胸
濁酒三杯豪氣発
朗吟飛下祝融峯
我(われ)来たって万里(ばんり)長風(ちょうふう)に駕(が)す
絶壑(ぜつがく)の層雲(そううん)許(かく)も胸(むね)を盪(ゆる)がす
濁酒(だくしゅ)三杯(さんばい)豪気(ごうき)発(はっ)し
朗吟(ろうぎん)して飛(と)び下(くだ)る祝融峯(しゅくゆうほう)
【訳】
万理の彼方から吹く風に乗り、祝融峯の頂上にやって来た。深く切り立った谷に、幾重にも重なる雲が湧き起こる風景に、胸が揺さぶられる。濁り酒三杯を飲めばたちまち豪快な気分になり、詩を吟じながら祝融峯を一気に駆け下りた。
【解説】
作者が38歳の秋(1167年)、湖南省長沙で学者の張栻(ちょうしょく)が主宰する岳麓(がくろく)書院を遠路はるばる訪れ、2か月にわたって起居を共にしました。二人は日夜大いに議論を交わし有意義に過ごしたといいます。この詩は、そんなある日に、岳麓山の麓から連なる山々の最高峰の祝融峰(標高1300m)に登ったときに詠んだものです。「祝融」は神話伝説に登場する火の神のことだといいます。哲学者でもある朱熹の、自身の研究への意欲と血気盛んなさまが窺える詩です。
七言絶句。「風・胸・峯」で韻を踏んでいます。〈駕〉は乗ること。〈長風〉は遠方から吹いてくる風。〈絶壑〉は深く切り立った谷。〈層雲〉は幾重にも重なって見える雲。〈許〉は、こんなにも。〈盪胸〉は胸を揺り動かす。〈濁酒〉は濁り酒。〈発〉は起こる、湧き上がる。〈朗吟〉は声高らかに詩を吟じること。〈飛下〉は飛ぶように一気に駆け下りること。
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