曹操
対酒当歌
人生幾何
譬如朝露
去日苦多
慨当以慷
幽思難忘
何以解憂
惟有杜康
酒に對(たい)して當(まさ)に歌うべし
人生 幾何(いくばく)ぞ
譬(たと)えば朝露(あさつゆ)の如し
去る日は苦(はなた)だ多し
慨(がい)して當(まさ)に以(もっ)て慷(こう)すべし
幽思(ゆうし)忘れ難し
何を以(もっ)てか憂いを解かむ
惟(た)だ杜康(とこう)有るのみ
【訳】
酒を前にしたら大いに歌おうではないか。人生がどれほどのものだというのか。たとえば朝露のようなもの、日々はあまりに速く過ぎ去る。気分が高ぶって、いやが上にも憤り嘆く声は大きくなっていく。だが胸の奥底の思いは忘れることができない。どうやってこの憂いを消し去ればよいのか。ただ酒を呑むしかないではないか。
【解説】
曹操作『短歌行』の冒頭の一節のみ掲げます。赤壁の戦いに望むにあたり、酒を飲みながら作った詩とされます。人生の短いのを歎きつつ、楽しめる時に楽しもうと言い、さらに後段まで読めば、有為の士を広く求めたいという人材登用の強い意志がうかがえる内容になっています。戦を前に、戦意を高め軍隊を鼓舞しようとするものでは決してないようです。
四言古詩。〈幾何〉は、どれほどのものか。〈去日〉は過ぎ去った日。〈苦〉は非常に、ひどく。〈慨〉は高ぶること。〈慷〉は嘆くこと。〈幽思〉は深い思い。〈杜康〉は、酒を発明したという人の名。転じて酒。
※赤壁の戦い
208 年、長江(揚子江)中流の湖北省にある赤壁で起こった孫権・劉備の連合軍と曹操との戦い。華北をほぼ平定した曹操は、さらに南下しようとして孫権・劉備の連合軍と赤壁で対峙したが、呉将周瑜の部将黄蓋が火攻めの計で曹操の水軍を全滅させた。以後曹操は江北の経営に力を注ぐようになり、孫権の江南における地位も固まった。
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