『詩経』
有女同車
顔如舜華
将翺将翔
佩玉瓊琚
彼美孟姜
洵美且都
有女同行
顔如舜英
将翺将翔
佩玉将将
彼美孟姜
德音不忘
女(むすめ)有(あ)り 車(くるま)を同(おな)じくす
顔(かお)は舜華(しゅんか)の如(ごと)し
将(は)た翺(こう)し将(は)た翔(しょう)すれば
佩玉(はいぎょく)は瓊琚(けいきょ)
彼(か)の美(うつく)しき孟姜(もうきょう)
洵(まこと)に美(び)にして且(か)つ都(と)なり
女(むすめ)有(あ)り 行(こう)を同(おな)じくす
顔(かお)は舜英(しゅんえい)の如(ごと)し
将(は)た翺(こう)し将(は)翔(しょう)すれば
佩玉(はいぎょく)は将将(しょうしょう)たり
彼(か)の美(うつく)しき孟姜(もうきょう)
德音(とくおん)忘(わす)られず
【訳】
あの娘と一緒に車に乗った。顔はムクゲの花のよう。軽やかに駆けめぐると、腰の玉飾りが揺れている。ああ、美しい孟姜は、本当に美人で雅やかだ。
あの娘と一緒に道を行く。顔はムクゲの花のよう。軽やかに駆けめぐると、腰の玉飾りがチャンチャンと鳴る。ああ、美しい猛姜の、優しい言葉が忘れられない。
【解説】
「有女同車(ゆうじょどうしゃ)は、ある女と同じ車に乗ったという意味で、今でいうドライブ・デートの喜びと楽しさを詠っています。「同車」と「同行」は恋愛詩の常套語となっています。
四言古詩。〈女〉は『詩経』では未婚の若い女性の意。〈舜華〉はムクゲの花。淡紅色または白色の花を咲かせ、女の顔色に譬えられる。〈将〉は「はた」と読み、語調を整える助辞。〈翺〉と〈翔〉はどちらも鳥が飛ぶのを表す語。ここでは車を軽やかに駆け巡らすこと。〈佩玉〉は腰に下げた飾り玉。〈瓊琚〉は美しい宝石。〈孟姜〉は斉国の姜家の長女という意味。『詩経』では美女の代名詞のような存在。〈洵〉は本当に、まことに。〈都〉は雅やか、都会的。〈舜英〉は「舜華」と同じ。〈将将〉は玉が触れ合って鳴る音の形容。〈徳音〉の「徳」は愛情がある、優しい、「音」は言葉の意。
『詩経』は、305編からなる中国最古の詩集で、孔子が編集したといわれます。風(諸国の民謡)・雅(宮廷の音楽)・頌(祭礼の歌)の三部からなっており、風は国風ともいい、周南・召南・邶(はい)・鄘(よう)・衛・王・鄭・斉・魏・唐・秦・陳・檜・曹・豳(ひん)の15に分かれ、雅は大雅・小雅の二つに分かれ、頌は周頌・魯頌・商頌の三つに分かれています。
これらの詩を孔子は、「詩三百、一言以てこれを蔽(おお)わば、曰く、思い邪(よこしま)なし」と評しており、純朴な心情を詠ったものが多くあります。また、『詩経』に収める詩は四言詩を基本とし、韻は踏みますが、句数、平仄などの形式は定まっていませんでした。
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