CDのデジタル・リマスター盤っていうのがありますね。LPレコード時代のアナログ音源をデジタル処理によって高音質に変えたもの。とくにクラシック音楽では古い音源に優秀な演奏が多いですから、それらのリマスター盤が数多くあります。でも、あれって、買うに当たってはよくよく注意しなくてはならないと思うところです。一般には雑音のないクリアな音に変貌するわけですが、決してよいことばかりではないからです。
私も、買って失敗した盤が何枚かあります。聴いていて途中で嫌になってしまう。確かにクッキリハッキリした音になっていて、楽器一つ一つの音もよく出ているのですが、全体としては、ハイ上がりで深みがない、響きがない、余韻がない、オーケストラの各楽器のバランスも悪い、と散々な印象です。ひどいのになると音楽というより単に音の信号を聴いているかのよう。そしてうるさい。要するに、極めて不自然なのです。ひょっとしたら、DAPやラジカセのような機器でしか、いい音に聴こえないんじゃないかと思います。
そもそもマスタリングというのは「音源」「ミキシング」「マスタリング」それぞれの段階の音質がトータルに合算されて仕上がるものですから、レコーディング技術者の能力やセンスに負うところが大です。古い音源だと、たいていは当時の技術者とリマスタリングする技術者が異なりますから、多くのリマスター盤は、全く別物が出来上がると考えたほうがいいんだと思います。
それでもリマスタリング技術者が優れていれば、原盤の魅力や要素を忠実に引き出し、トータルバランスのよい素晴らしい音楽になって蘇るはずですし、実際、そういう盤も少なからずあります。もっとも、音源自体の質が悪ければどうしようもないというか、リマスタリングの結果が不自然になるのも無理からぬところもあるのでしょう。いずれにせよ、ずいぶん悩ましいところであります。
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