張継
月落烏啼霜満天
江楓漁火対愁眠
姑蘇城外寒山寺
夜半鐘声到客船
月(つき)落ち烏(からす)啼(な)いて霜(しも)天に満つ
江楓(こうふう)の漁火(ぎょか)愁眠(しゅうみん)に対(たい)す
姑蘇城外(こそじょうがい)の寒山寺(かんざんじ)
夜半(やはん)の鐘声(しょうせい)客船(かくせん)に到(いた)る
【訳】
月が沈み、烏が鳴き、霜の降りる気配が天に満ちている。点々と見える漁り火が川岸の楓(かえで)の木々を照らし、うつらうつらとして眠れない私の目に映る。そんなところへ、姑蘇城外の寒山寺から、夜半を告げる鐘の音が、私の乗っている舟にまで聞こえてきた。
【解説】
地方官に任じられた作者が、蘇州の楓橋のほとりに舟どまりしたときの作とされ、旅愁のために眠れぬまま寒山寺の鐘の音を聞いたという様子を詠っています。多くの漢詩のなかで、中国、日本とも最も広く知られてきたものの一つですが、細かな語句の解釈について、昔から議論のある作品でもあります。また、「句は優れているが、夜中は鐘を打つ時ではない」との批判も受けたりしています。とまれ、詩人としての長継はこの詩一首だけで有名になりました。
七言絶句。「天・眠・船」で韻を踏んでいます。〈楓橋〉は江蘇省の蘇州にある運河にかかった橋の名前。もとは封橋と書いていたのを、この詩が有名になったので楓橋と改められたといいます。〈夜泊〉は夜、船の中で泊まること。〈霜満天〉は、ひどく寒く霜が一面に降りそうな天気。〈江楓〉は岸辺のカエデの木、「江村」(川沿いの村)とする説もあります。〈姑蘇城〉は蘇州のことで、城壁に囲まれていました。〈寒山寺〉は南北朝時代に創建され、かつて寒山(かんざん)、拾得(じっとく)の2人の詩僧が住んでいたといわれる名鐘で名高い寺。蘇州に今でもあります。〈客船〉は、旅人すなわち作者を乗せた船。
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