韓非は、悲劇の人でした。生まれながらの重度の吃音で、口で喋るのはたいへん苦手でしたが、「それなら文章で雄弁に語ろう」と思い立ち、努力して名文家になりました。彼は、師とされる荀子の「人間の本性は悪である(性悪説)」との視点に立ち、帝王たる者が天下を統一するための秘訣を書物に著しました。
その書物は、韓非の祖国・韓ではほとんど評価されませんでした。皮肉にも、彼の才能を評価したのは、韓の敵国だった秦の王、政(のちの始皇帝)でした。若き秦王政は、竹簡に記された韓非の著作を読んで、「ああ、余はもしこの人と一緒に語り合うことができたら、死んでもいい」と嘆息し、策を講じて韓非を自国に呼び寄せました。
ところが、秦の大臣が韓非の才能に嫉妬し、彼が自分より重用されることを恐れました。そこで大臣は讒言して韓非を入獄させたあと、ひそかに韓非に毒薬を送り、自殺を強要したのです。のちに秦王政が後悔し、韓非を許そうとしましたが、彼はすでに死んでいました。
秦王政は『韓非子』を熟読し、やがて中国最初の皇帝・始皇帝となりました。それから後も、『韓非子』は帝王学のバイブルとして読み継がれ、かの諸葛孔明も、『韓非子』を筆写して劉備の子・劉禅に献上したほどです。現代でも、「一流は韓非子を読む」といわれるほどに、企業のトップまたは管理職の必読書として高く評価されています。
なお、『韓非子』については、別ページで、これはと思うお話の現代語訳(要約)や韓非の言葉などを掲載していますので、ぜひご参照ください。
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⇒ 韓非の言葉《まとめ》
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