王安石
大梁春雪満城泥
一馬常瞻落日帰
身世自知還自笑
悠悠三十九年非
大梁(たいりょう)の春雪(しゅんせつ)満城(まんじょう)の泥(どろ)
一馬(いちば)常(つね)に落日(らくじつ)を瞻(み)つめつつ帰る
身世(しんせい)自(みずか)ら知り還(ま)た自(みずか)ら笑う
悠悠(ゆうゆう)三十九年(さんじゅうくねん)の非(ひ)
【訳】
開封(かいほう)は春の残雪で、町中が泥だらけだ。一頭の馬に跨る私は、いつも落日を見ながら役所から帰途につく。これまでのわが人生を自ら悟り、また自ら笑う。はるかに辿れば、この三十九年間は誤りだった。
【解説】
結句にあるとおり、王安石39歳の作。題の「省中」は役所のこと。当時、彼は度支判官(たくしはんがん:会計官)として、開封で役所勤めをしていました。早朝に出勤し、疲れ果てて帰るのは日の落ちるころ。しかも道路は折からの春の雪で泥だらけ。やりきれない思いで馬に乗っての帰途、これまでの自らの半生を振り返れば、誤りの連続だったと臍を噛む・・・。王安石は22歳で科挙に合格するものの、官界では一地方官として不遇が続き、政治改革を訴える上奏文によって皇帝の側近たる翰林学士(かんりんがくし)に抜擢されたのは46歳の時でした。この詩に歌われた不満は、高い志の裏返しだったのでしょうか。
七言絶句。「泥・帰・非」で韻を踏んでいます。〈大梁〉は戦国時代の魏の都。北宋の首都・開封はこの故地に置かれました。〈身世〉はこれまでの自分の人生。〈悠悠〉は遠くはるかなさま。
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