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漢詩を読むがんばれ高校生!

鐘山即事(しょうざんそくじ)

王安石

澗水無声繞竹流
竹西花草弄春柔
茅簷相對坐終日
一鳥不啼山更幽

澗水(かんすい)声(こえ)無(な)く竹(たけ)を繞(めぐ)って流(なが)る
竹西(ちくせい)の花草(かそう)春柔(しゅんじゅう)を弄(ろう)す
茅簷(ぼうえん)相対(あいたい)して坐(ざ)すること終日(しゅうじつ)
一鳥(いっちょう)啼(な)かず山(やま)更(さら)幽(ゆう)なり

【訳】
 谷川の水は音も無く竹林をめぐって流れ、竹林の西には草花が咲き乱れ、春の柔らかな日差しに戯れている。茅葺きの軒の下で鍾山と向かい合って一日中座っていると、一羽の鳥も鳴かず、山はいっそう奥深い静けさが増すばかりである。

【解説】
 王安石が宰相の職を辞し、鐘山の近くに隠退した後の悠然とした自らの心境を詠んだ詩です。鐘山は南京(江蘇省)の郊外にあり、彼が最も愛した山とされます。彼が晩年に「半山」と号したのは、この鐘山と南京との半ばの辺りに隠居を構えていたからだといいます。題の「鐘山即事」の「即事」は、折に触れて、またはその場のことを題材として詩を作ることを意味します。またこの詩は、李白の「獨坐敬亭山」や王維の「鹿柴」などを意識して作ったといわれます。
 
 七言絶句。「流・柔・幽」で韻を踏んでいます。〈澗水〉は谷川の水。〈繞〉は周りを巡る。〈竹西〉は竹林の西側。〈花草〉は花と草、または花の咲く草。〈弄〉は戯れる、もてあそぶ。〈春柔〉は春の柔らかな日差し。〈茅簷〉は茅葺きの軒。〈相対〉は向かい合う。〈坐終日〉は一日中座る。〈一鳥〉は一羽の鳥。〈更幽〉は、いっそう奥深く静かなさま。

王安石(おうあんせき)

北宋の政治家・文学者(1021~1086年)。字は介甫。号は半山。撫州臨川県の人。新法党の領袖。神宗の政治顧問となり、制置三司条例司を設置して新法を実施し、政治改革に乗り出す。文章家としても有名で、仁宗に上奏した「万言書」は名文として称えられ、唐宋八大家の一人に数えられる。また詩人としても有名。儒教史上、新学(荊公新学)の創始者であり、『周礼』『詩経』『書経』に対する注釈書『三経新義』を作った。

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