
王安石
澗水無声繞竹流
竹西花草弄春柔
茅簷相對坐終日
一鳥不啼山更幽
澗水(かんすい)声(こえ)無(な)く竹(たけ)を繞(めぐ)って流(なが)る
竹西(ちくせい)の花草(かそう)春柔(しゅんじゅう)を弄(ろう)す
茅簷(ぼうえん)相対(あいたい)して坐(ざ)すること終日(しゅうじつ)
一鳥(いっちょう)啼(な)かず山(やま)更(さら)幽(ゆう)なり
【訳】
谷川の水は音も無く竹林をめぐって流れ、竹林の西には草花が咲き乱れ、春の柔らかな日差しに戯れている。茅葺きの軒の下で鍾山と向かい合って一日中座っていると、一羽の鳥も鳴かず、山はいっそう奥深い静けさが増すばかりである。
【解説】
王安石が宰相の職を辞し、鐘山の近くに隠退した後の悠然とした自らの心境を詠んだ詩です。鐘山は南京(江蘇省)の郊外にあり、彼が最も愛した山とされます。彼が晩年に「半山」と号したのは、この鐘山と南京との半ばの辺りに隠居を構えていたからだといいます。題の「鐘山即事」の「即事」は、折に触れて、またはその場のことを題材として詩を作ることを意味します。またこの詩は、李白の「獨坐敬亭山」や王維の「鹿柴」などを意識して作ったといわれます。
七言絶句。「流・柔・幽」で韻を踏んでいます。〈澗水〉は谷川の水。〈繞〉は周りを巡る。〈竹西〉は竹林の西側。〈花草〉は花と草、または花の咲く草。〈弄〉は戯れる、もてあそぶ。〈春柔〉は春の柔らかな日差し。〈茅簷〉は茅葺きの軒。〈相対〉は向かい合う。〈坐終日〉は一日中座る。〈一鳥〉は一羽の鳥。〈更幽〉は、いっそう奥深く静かなさま。
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不潔を気にしない男
王安石は、中国の歴史上でもトップクラスの「不潔を気にしない男」として有名です。身なりにまったく無頓着で、何日も顔を洗わず、お風呂にも滅多に入りませんでした。服が垢で黒ずんでいても平気だったと言われています。
ある時、時の皇帝・神宗(しんそう)と国の重大な政治について真剣に議論を交わしていました。すると、王安石の髭のあたりを、一匹のダニがモゾモゾと這い回っていました。皇帝はそれを見て思わず笑ってしまいました。退席後、同僚の科学者・政治家である沈括(しんかつ)に「さっき皇帝が笑っていらっしゃったが、何かあったか?」と尋ね、ダニのことを教えられると、「早く払ってくれ」と言いました。しかし沈括は「皇帝がお笑いになったほどのダニですから、縁起が良い。そのままにしておかれては?」とからかったそうです。
また、あまりに王安石が汚いので、親友の韓維(かんい)らは、定例の集まりの際にお寺の浴場を予約し、王安石を半ば強制的に風呂に入れました。そして彼が入浴している間に、垢まみれの汚い服をこっそり新品の服に仕立て替えておきました。王安石は風呂から上がると、服が変わっていることにも全く気づかず、ただそこにあった服を着て平然と帰っていったそうです。
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