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音の響きと湿度の関係

 音の響きと湿度の関係について、興味深いお話があります。ある有名なギター・メーカーでは、自社で製作したギターを出荷する前に、約3ヶ月間クラシック音楽を聴かせるというんです。楽器に音楽を聴かせる!?

 なぜすぐに出荷せずに、わざわざクラシック音楽を聴かせるかというと、聴かせた前後で音の鳴り方が劇的に変わるからだというんです。そんなバカな!と思うところですが、その仕組みはこういうことです。クラシック音楽を流すことで空気が振動し、その響きがギターのボディに伝わる。その微細な振動は、ボディの素材である木材の奥深くまで伝わり、そこにある水の分子を振動させる。振動によってエネルギーが発生し、水の分子は蒸発、結果、ギターは芯の芯まで適度に乾燥して音を響かせやすい状態になる。

 反対に、たとえばしばらく弾いていない楽器では、心地よい音が響かなくなる。久しぶりにピアノなんか弾くと「音が何だかヘンだぞ」って感じる。ボディが空気中の湿気を吸い込んで必要以上に湿気てしまうからなんですね。
 
 また、他のジャンルの音楽ではなく、なぜわざわざクラシック音楽を聴かせるのかについては、クラシック音楽がいわゆる「1/fゆらぎ」のメロディーに満ちた音楽だからなのでしょう。私たち生体内や自然界にあまた存在する、規則性と突発性、予測性と逸脱性が適度に組み合わさった1/fゆらぎの振動が、楽器の素材の分子を自然なかたちでふるわせるのに程よいということなのでしょう。

 ところで、リスニングルームの湿度と音の響きの関係はどうなんでしょうか。ご承知の通り、音は空気の振動によって伝わります。湿度が高くなるというのは空気中の水分が増えるということなので、すなわち振動する物質の量が増えます。そうなると、音はよく伝わるようになります。では高い湿度のほうがいいのかというと、それは違うんですね。言われるまでもなく既に実感している方もいらっしゃると思いますけど、よい音で聴くためには、湿度は低いほうが断然いい!

 その理由はというと、低音と高音の振動幅の違いが大きく影響するからなんですね。周波数の低い低音は単位時間あたりの振動数が少なく振幅が大きい。反対に高音は振動数が多くて振幅が小さい。スピーカーから出た音は、私たちの耳に届くまでに100%伝わってくるわけではなく、いくらかは空気中の物質に吸収されて減衰します。振幅の大きい低音は吸収される割合が少なくてすみますが、高音は振幅が小さい分、吸収される割合が大きくなります。そして、音を伝える物質が多いほどその影響は拡大します。

 ですから、湿度の高い部屋で音楽を聴くと、何となく「抜け」が悪いというか、響きのないもこもこした音になってしまいます。つまり、低音と高音のバランスが崩れてしまう。ミュージシャンの方々が演奏する際も、高い湿度はひどく嫌うそうですからね。よく著名なミュージシャンがわざわざ海外に行って録音しますが、高温多湿な日本ではクリアな音が出ないからだといわれます。

 そんでもって、どれくらいの湿度がいいかというと、実感では40〜50%くらいが適当かなと思っています。人間にとって快適であれば、音にとっても快適なのかもしれません。あと、個人的には、空気中にマイナスイオンもあると、なおよろし。


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オーディオの三要素は「電気」と「振動」と「気流」です。その中でも最後に耳に音楽を届けてくれるのは「気流」です。
 
〜カイザーサウンド

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