本文へスキップ

漢詩を読むがんばれ高校生!

中秋月(中秋の月)

蘇軾

暮雲収盡溢清寒
銀漢無聲轉玉盤
此生此夜不長好
明月明年何處看

暮雲(ぼうん)収(おさ)まり尽(つ)きて清寒(せいかん)溢(あふ)る
銀漢(ぎんかん)声(こえ)無(な)く玉盤(ぎょくばん)転(てん)ず
此(こ)の生(せい)此の夜(よ)長(とこし)えには好(よ)からず
明月(めいげつ)明年(みょうねん)何(いず)れの処(ところ)にか看(み)ん

【訳】
 日暮れ時、雲はどこかに去ってしまい、心地よい冷気が辺りに満ちている。天の川は音もなく流れ、玉の盆のような月があらわれた。
 この人生、この夜がいつまでも続くとは限らない。この明月を、来年はどこで見ているのだろうか。

【解説】
 作者41歳、徐州(江蘇省)の知事であった時に、仲のよい弟の轍(てつ)とともに暮らした彭城(ほうじょう)で詠んだ詩です。第2句で銀漢(天の川)と月の神秘的な美しさを際立たせ、第3・4句では、そうした月夜がいつまでも見られるとは限らないという世の無常に、将来の期待と不安とが入り混じった作者の心情が窺えます。

 七言絶句。「寒・盤・看」で韻を踏んでいます。〈中秋月〉は陰暦8月15日の月。〈暮雲〉は夕暮れ時の雲。〈収盡〉は、どこかにしまい込まれて無くなる。〈清寒〉は清々しい冷気。〈銀漢〉は天の川、銀河。〈声無〉は音が無い。〈玉盤〉は月の異名。〈不長好〉は、いつまでも良いとは限らない。「とこしえによからず」と読んで、「いつも良いとは限らない」とするものもあります。

蘇軾(そしょく)

北宋の政治家・文学者。北宋随一の文人で、21歳で科挙に合格。その生涯は政争の渦中にあって波瀾に富むが、持ち前の明朗闊達さを失うことのなかった強靭で博大な人格は、多くの人々に敬慕された。詞・書・画にも一流の才能を発揮した。
湖州の知事であった44歳のとき、詩文によって朝政を誹謗したとして投獄され、死罪の危機に直面するが、皇帝の恩命を得て死を免れ、長江に沿う黄州に流罪となる。その地で労働のかたわら優れた作品を生み、東坡居士を号した。

【PR】

目次へ

がんばれ高校生!

がんばる高校生のための文系の資料・問題集。

バナースペース

【PR】

押 韻

押韻とは、同じ音または類似の響きの漢字(音読み)を句の末尾に揃える決まり。韻を踏むことによって、文章がリズム感を持ち、読みやすく心に残りやすい詩となる。

古体詩もすべて押韻されていたが、近体詩では、基本的に偶数句末が韻を踏む。五言絶句なら2句と4句目。七言律詩なら2・4・6・8句。逆に奇数句末では韻を外さなくてはならない。なお七言詩の場合に限り、初句でも韻を踏むことがある。

ただし、日本語や現代中国語で発音しても同じ響きにならないものがあるが、時代の推移によって発音が変わったことによる。 

目次へ