蘇軾
梨花淡白柳深靑
柳絮飛時花滿城
惆悵東欄一株雪
人生看得幾淸明
梨花(りか)は淡白(たんぱく)にして柳(やなぎ)は深青(しんせい)なり
柳絮(りゅうじょ)の飛(と)ぶ時(とき)花(はな)は城(しろ)に満(み)つ
惆悵(ちゅうちょう)す東欄(とうらん)一株(いっしゅ)の雪(ゆき)
人生(じんせい)幾(いく)たびの清明(せいめい)をか看得(みえ)ん
【訳】
梨(なし)の花は淡い白さであり、柳は深い濃い緑色をしている。柳絮(りゅうじょ)が飛び交うころには、町は花ですっかり埋まってしまう。嘆かわしく思うのは、官舎の東の欄干のそばに、雪のように白く咲いていた一本の梨の木の花。人生でこれから先、いったい何回こんな素晴らしい清明の日を迎えられるだろうか。
【解説】
題の「和孔密州五絶東欄梨花」は、「孔(こう)密州(みつしゅう)の五絶(ごぜつ)に和す東欄(とうらん)の梨花(りか)」と読み下します。5首連作のその3にあたります。それぞれに小題が付されており、これはこの詩に付された小題です。作者42歳の作で、密州知事の任期を終えて新たに徐州知事に着任した際、後任の密州知事となった孔宗翰(こうそうかん)から示された「東欄梨花」という詩に和したものです。密州は山東省諸城県、徐州は江蘇省徐州市。人事異動が重なった春爛漫の清浄明潔の時季、好事の続き難い人生の無常に思い浸っています。なお、孔宗翰は孔子の子孫にあたる人です。
七言絶句。「靑・城・明」で韻を踏んでいます。〈梨花〉は梨(なし)の花。〈淡白〉は淡い白色。ほんのりと白い。〈深青〉は深い緑色。〈柳絮〉は柳の白い綿毛がついた種子。暮春のころに綿のように乱れ飛びます。〈城〉は城壁で囲まれた町のこと。〈惆悵〉は嘆き悲しむ、傷み悲しむ。〈東欄〉は密州の官舎の東側の欄干。〈一株雪〉は梨花の白さを雪に喩えたもの。「株」は草木を数える助数詞。「二株雪」とする本もあります。〈看得〉は見ることができる。〈清明〉は二十四節気の一つで、春分から15日目。陽暦で4月5、6日頃。
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