蘇軾
水光瀲灔晴方好
山色空濛雨亦奇
欲把西湖比西子
淡粧濃抹総相宜
水光(すいこう)瀲灔(れんえん)として 晴れて方(まさ)に好(よ)く
山色(さんしょく)空濛(くうもう)として雨も亦(ま)た奇なり
西湖(せいこ)を把(も)って西子(せいし)に比せんと欲(ほっ)すれば、
淡粧(たんしょう)濃抹(のうまつ)総(すべ)て相宜(あいよろ)し
【訳】
水面がキラキラと輝き、さざなみが揺れている。晴れた日の西湖は実に素晴らしい。
また霧雨で山の色が朦朧とにじんでいる、雨の日の西湖も味わい深いものだ。西湖の様子を伝説的な美女(西施のこと)にたとえるなら、薄化粧も厚化粧も、どちらも似合っていて、素晴らしい。
【解説】
この詩は、蘇軾が杭州の通判(副知事)だったときに、西湖で舟遊びしたときの作とされています。西湖は杭州市の西にあり、昔から江南の景勝地としてにぎわってきた湖です。ベネツィアの商人マルコ・ポーロがその美しさを賞賛したことでも有名で、蘇軾はこの湖をこよなく愛していたといいます。
わが国では、かの松尾芭蕉が、『奥の細道』のなかで、松島の景色を洞庭湖・西湖に比べて恥じないと絶賛し、また「象潟(きさがた)」の章ではこの「飲湖上初晴後雨」を引用した句を詠んでいます。「象潟や雨に西施がねぶの花」。
七言絶句。「奇・宜」で韻を踏んでいます。〈水光〉は湖の水面が輝いているさま。〈瀲灔〉はさざ波が立つさま。〈山色〉は山の色、山の景色。〈空濛〉は小雨が降ってぼんやりと暗いさま。〈西子〉は春秋時代に越王・勾践(こうせん)から呉王・夫差(ふさ)に献上された杭州ゆかりの美女・西施(せいし)で、「顰(ひそ)にならう」の故事で有名です。〈淡粧〉は薄化粧。〈濃抹〉は厚化粧。〈相宜〉は、ふさわしい。
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