本文へスキップ

ウンコにまみれた中学受験

 もうだいぶん前になりますが、私の次男が中学受験したときの出来事です。学校は電車で1時間以上もかかる遠方でした。当日は、朝暗いうちから私が一緒に出かけていきました。ところが、途中で大変な事件が発生したのです。何と、次男がウンコを漏らしてしまったのです。

 電車に乗っていて降りる駅に近づいた頃、突然「おなかが痛い、トイレに行きたい」と言い出しました。緊張と寒さから下痢を引き起こしてしまったようです。

 大急ぎで駅のトイレに駆け込み、私は荷物を持って外で待っていました。しかし、なかなか出てきません。10分くらい経ったでしょうか。ようやく出てきた次男の顔は、普通ならスッキリしているはずなのに、何か深刻な顔つきでありました。どうしたのかと尋ねたら、「漏らした」といいます。先客がいて、待っているうちに我慢しきれなくてパンツの中に出してしまったのです。ズボンのお尻を見ると直径30センチくらいの大きな染みがついています。パンツはどうしたのかと聞いたら、トイレに捨てたと言います。

 大事な受験を前に何たる事だと呆然となりました。新しいズボンとパンツを買おうにも、早朝なのでまだどこの店も開いていません。どうしようかと思っていたら、本人は「大丈夫」と言います。幸いオーバーのような上着を着ていましたので、お尻の染みは隠れて見えません。気になるのは臭いです。

 仕方なく学校まで歩いてたどり着きましたが、本番直前のこの気持ちの動揺は致命的だと思いました。まともな精神状態で試験に臨むことはできないはずです。この2年間の苦労が、たかがウンコのために水泡に帰すのかと思うと残念でなりませんでした。

 ところが結果は、何と合格でした。ウンが離れなかったとしか言いようがありません。臭いはどうだったのかと心配しましたが、「後ろの席の子は、欠席だったから大丈夫」と本人は言います。本当だったのでしょうか。

エスカレーター校

 私立中学校の中でも、大学までエスカレーターで上がれる学校の人気が高くて、偏差値もかなり高いようです。しかし、個人的な意見ではありますが、そういう学校に行くのはちょっと賛成しかねるところです。

 それらの学校は、入るときは難しいのですが、入った後は、ない中・高一貫のみの学校と比べて勉強への熱の入れようは月とスッポンほども違います。エスカレーター付きの学校の卒業生に聞いたところでは、その学校では「楽しく充実した学園生活」がモットーで、いろいろな行事やクラブ活動ばかり盛んで、勉強はあまり力を入れてしないそうです。入る前のあの偏差値の高さはいったい何のためだったのかと思います。

 私が賛成しない理由の一つは、人間というもの、青少年時代の一時期には必死で勉強するべきだと思うからです。大学受験のための勉強が真の勉強かと言われれば、若干疑問なしとはしないものの、中・高校でも遊ぶ、大学でも遊ぶというのでは、決してバランスの取れた人間にはならない気がするのです。

 もう一つの理由は、小学生の段階で早くも大学の行き先まで決めてしまっていいものか、ということです。確かにそれらの大学は有名校に数えられてはいますが、もっと上はいくらでもあります。現に、途中で進路方針を変えて独学に励んで国立大学を受けて合格した子もいます。もちろんその余地が残されていますからどうこう言う必要はないのかもしれませんが、学校自体は大学受験用の鍛え方をしてくれませんから、極めて非効率・不合理です。
 

無念の親子

 毎年、1月下旬には多くの私立中学校の入試があり、翌日には早くもいくつかの学校の合格発表があります。何年か前のその日、ちょうど強い寒波がやってきて身も凍るような厳しい寒さとなり、受験生の子どもたちにはたいへん気の毒なコンディションでした。

 その翌日の午後2時ごろ、私は仕事の都合で外出していまして、JR大阪環状線の某駅の構内で、合格発表を見に行った帰りの4人の家族連れに出会いました。それも、無念にも不合格だった子の家族です。

 なぜそれが分かったかというと、男の子にお父さんがさかんに声をかけているのが聞こえてきたからです。

「大丈夫、どうってことない、3年後にリベンジしたらいいんだ、お前ならできる!」

 男の子は悔しさと悲しさを抑えきれないのでしょう。手の甲であふれる涙を何度も拭いながら、どんどん前を歩いていきます。追いすがるお父さん。そして、その後ろから何ともやるせない表情でついていくお母さんと妹・・・。

 これは辛い光景でした。それまで2年も3年も家族ぐるみでがんばってきたのに、わずか2日間の出来事であっけなく打ち砕かれてしまった夢と希望。しゃくりあげながら前を歩いていく男の子の顔は見えませんでしたが、彼が受けた心の傷の深さはいかばかりでしょうか。

 そういう姿に接すると、まだ生まれて10年ちょっとしか経っていない子どもたちが受ける試練としては、あまりに過酷なような気がしてきます。いったん中学受験を目指すからには、きちんとした目標意識を植えつけてまっしぐらに努力させる必要があります。しかし、だめだったときの、「大丈夫、どうってことない」という励ましの言葉とのギャップをいかに埋めるかは、実際にはたいへん難しいと思います。
 

目次へ ↑このページの先頭へ

やる気があるときなら、誰でもできる。本当の成功者は、やる気がないときでもやる。
 
〜フィル・マグロー
努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない。
 
〜王貞治
君がどんなに遠い夢を見ても、君自身が可能性を信じる限り、それは手の届くところにある。
 
〜ヘルマン・ヘッセ
一方は「これで十分だ」と考えるが、もう一方は「まだ足りないかもしれない」と考える。そうしたうわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。
 
〜松下幸之助
一度も失敗したことのない人は、何も新しいことに挑戦したことがない人である。
 
〜アインシュタイン

目次へ