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漢詩を読むがんばれ高校生!

辛夷塢(しんいお)

王維

木末芙蓉花
山中発紅萼
澗戸寂無人
紛紛開且落

木末(ぼくまつ)芙蓉(ふよう)の花
山中(さんちゅう)紅萼(こうがく)を発(ひら)く
澗戸(かんこ)寂(せき)として人無く
紛紛(ふんぷん)として開き且(か)つ落(お)つ

【訳】
 木末(こずえ)に咲いた蓮の花のように、コブシが山の中で赤い花をつけた。谷川に沿った家は静まり返っていて、人の気配はない。コブシの花は、人知れず、しきりに咲いては散っていく。

【解説】
 王維は、晩年に長安郊外の輞川(もうせん)という地に別荘を構え、20の風光明媚な地を詩に詠みました(輞川集)。この詩はそのうちの一つで、谷川のせせらぎだけが聞こえる静寂の中、誰にも愛でられることのないコブシの花が、ただひたすらに、ひたむきに花を咲かせ散っていくという、素晴らしく印象的な絵画的な情景を詠じています。題の「辛夷塢」の「辛夷」はコブシ(またはモクレン、ハクモクレン)、「塢」は土手のことで、コブシが生えている土手の意。
 
 五言絶句。「萼・落」で韻を踏んでいます。〈本末〉は、木の上の方の梢。〈芙蓉〉は蓮の花。起句は『楚辞』九歌の「芙蓉を木末に搴る」を踏まえています。〈紅萼〉は赤い花。〈澗戸〉は谷川沿いの家。〈寂無〉は、静かで~が無い。〈紛紛〉は、しきりに。多くのものが入り乱れるさま。このように同じ字を重ねた熟語を「重言(ちょうげん)」または「畳語(じょうご)」といいます。

王維(おうい)

杜甫に次ぐ盛唐の大詩人(699年?~761年)で、仏教信者であったため「詩仏」と称される。科挙に合格して玄宗に仕え、安史の乱で捕えられいったんは賊軍に与したが、許されて唐王朝に復帰した。晩年は長安郊外の輞川(もうせん)に隠棲。絵画にも堪能で、その詩風も「詩中に絵あり、画中に詩あり」と評された。

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絶 句

近体詩のうち、一編が四句(四行)からなる詩。各句が五文字の「五言絶句」と各句が七文字の「七言絶句」がある。絶句は、次の構成をとる。

起句・・・歌い起こす。
承句・・・起句を受けて展開。
転句・・・場面を転換させる。
結句・・・全体を締めくくる。

「起承転結」という語はこの絶句に由来する。また、古詩の最小単位である四句で断ちきったところから「絶句」の名があるとされ、唐代にいたってそれに近体詩の韻律をあてはめている。 

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