そもそも哲学というのは、紀元前600年頃に、古代ギリシアの記録に残る最古の哲学者タレスに始まったとされます。ギリシア七賢人の一人とされるタレスは、「万物の根源(アルケー)は水である」と述べ、人類がはるか昔から考え続けてきたであろう「存在」の問題について解を見出そうとしたのです。
この命題はタレス以後も引き継がれ、彼の弟子たちによって、万物の根源は「無限定な何か」であるとか、あるいは死人が呼吸をしないことから「空気(気息)」こそがアルケーであるとするなど、さまざまな仮説が提示されました。ことさように、古代の人類にとって「存在とは何か?」という問いかけは、大変重要な問題だったわけです。
そんななか登場したのがヘラクレイトスです。彼は、万物には相反するものの戦いがあって、あらゆるものはこうした戦いから生じるのだと主張しました。したがって、「戦いこそが万物の父、万物の王」であり、戦いによってすべての存在は形を変え、別のものに変化し続ける、すなわち「万物は流転する」のだと。
さらに彼は考えました。こうした戦いによる変化はデタラメに起こっているのだろうか、いやそうではない、万物に共通する何らかのルールがあるはずだ、と。そして万物を支配するルールのことをロゴス(法則)と名づけました。そして、ロゴスの象徴として「火」を想定したのです。火は転化して水となり、水は土となる。土は水となり、そして水は火に還る。双方のプロセスは相反しているようで、全体としては調和が保たれており、この世界は「つねに活きる火としてほどよく燃えながら、いつもあったし、あるし、あるであろう」と説いています。
ヘラクレイトスは小アジアのイオニア地方の町エペソスの王家を出自としていましたが、親友のヘルモドロスが衆愚政治によって追放されたことに怒り、その国制を悪しきものとして嫌悪し、政治から手を引きました。後にエペソスの人々から法律の制定を依頼されましたが、にべもなく断り、子どもたちに交じってサイコロ遊びに興じていたといわれます。さらに晩年には人間嫌いになって山にこもり隠遁生活を送ったといわれ、そうしたことから、彼は「暗い哲学者」「泣く哲学者」などと称されました。
なお、彼の著書といわれる『自然について』は現存せず、断片のみが伝わっています。その難解で謎めいた文体は当時の人々をも悩ませたらしく、アリストテレスは「ヘラクレイトスの文章は、句読点を打つことも困難だ」と言っているほどです。
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ヘラクレイトスの言葉から
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