本文へスキップ

哲学に親しむがんばれ高校生!

イエス・キリスト

イスラエル北部のナザレ出身のユダヤ人(前4年?~後30年?)で、キリスト教の始祖。その生誕年が西暦紀元とされるが、実際には差があると考えられている。「キリスト」とは救世主を意味する語で、「イエス・キリスト」は「救世主であるイエス」の意味。キリスト教では、信仰対象の唯一神とイエス・キリストは同一の存在であるとされ、神の子、神と同一の者として崇められる。
死後、ペテロやパウロなどの弟子やその流れを汲む者たちによって、彼の言行録が著され伝承された。これを後にまとめたのが「新約聖書」。キリスト教が誕生し聖典として伝えられ、現在でもこの書物を通して彼の思想・行動・伝説などを知ることができる。キリスト教徒は全宗教のなかで最多とされ、世界で最も多くの人々から崇拝・崇敬されている人物であるともいえる。

 キリスト教の母胎となったのが、ユダヤ教です。ユダヤ教は唯一神ヤハウェを信仰するイスラエル人の民俗宗教であり、神から特別の使命とめぐみを受けているのはイスラエル人であるという選民意識を有するものでした。そして、神とイスラエル人との契約を中心に編さんされたユダヤ教の聖典が『旧約聖書』です。彼らがこうした選民意識に基づく宗教を生み出した背景には、イスラエル人がたどってきた苦難の歴史があります。
 
 イスラエル人の出自には諸説あるようですが、紀元前15世紀ごろに、パレスチナで牧畜に従事していたイスラエル人たちは、飢餓に見舞われエジプトに移住し、エジプト王から厚遇を得て栄えていました。しかし、王朝が代わると激しい迫害が始まり、ついには奴隷専用として扱われるようになり、悲惨な生活を強いられました。その後、モーセが中心となって、60万人ものイスラエル人がエジプトから脱出します(出エジプト)が、行く当てはなく、追っ手に怯えながらの放浪生活を続けます。
 
 そうした苦難の中で生まれたのが、今のユダヤ教です。唯一絶対の神ヤハウェのみを信じ、その神から与えられた戒律を守る限り、やがて救世主(キリスト)が現れて救済されるであろう、という独自の宗教を作り出し、それを強く信じ込むようになったのです。
 
 その信仰を支えに生き抜いた彼らは、ようやくパレスチナの地にたどり着き、古代イスラエル王国を建国します。しかし間もなく、王国は北のイスラエル王国と南のユダ王国に分裂し、さらに北はアッシリアに、南は新バビロニアに滅ぼされ、イスラエル人たちは再び奴隷として連れ去られてしまうのでした(バビロン捕囚)。
 
 そんな彼らの前に現れたのが、イエスです。イエスはイスラエルの北東部の町ガリラヤの大工ヨハネの息子で、成人してのち、ヨルダン川のほとりで「終末の審判が近づいた。悔い改めて洗礼を受けよ」と熱心に説く予言者ヨハネから洗礼を授かります。そして、神の福音(喜ばしき知らせ)を伝えることに目覚め、宗教活動を開始しました。彼はユダヤ教の「戒律を守る者だけが救われる」という律法主義を否定し、神を信じる者はすべて救われる」と説きました。
 
 イエスは、ガリラヤ湖ほとりの町に移り住み、会堂で説教を行いました。やがてイエスの名前は広く知られるようになり、多くの人々がイエスの教えを聞こうと集まってきました。その説教の中には、今も名言として知られる「汝の隣人を愛せよ」「汝の敵を愛せよ」「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ」「下着を奪うものには、上着も与えよ」などの言葉がありました。
 
 しかし、イエスの人気が下層の民衆の間で高まるにつれ、律法を頑なに守ってきたユダヤ教の指導者や保守派(パリサイ派)の人々は次第に反発心を強めるようになり、イエスを律法破りとして領主とローマの総督に訴えました。当局側も、イエスの動きが反ローマの蜂起につながるのではないかと恐れていました。イエスは自らの逮捕が近いことを知り、12人の弟子たちとともに「最後の晩餐」を開き、弟子の一人ユダの裏切りによって捕らえられてしまいました。
 
 裁判の結果、有罪となったイエスは、都の外れのゴルゴタの丘で十字架にかけられ処刑されました。弟子たちはなすすべもなく逃げ隠れましたが、イエスの死後間もなく、イエスを見たという弟子たちが現れ、彼らはイエスの「復活」をイエスへの裏切りの赦しととらえ、そうして原始的なイエス信者の団体(原始教会)が生まれました。彼らは、昇天したイエスは神のもとで最後の審判を下す救世主(ギリシア語でキリスト)であると信じ、イエス・キリストと呼ぶようになりました。
 
 キリスト教はイエスが生きている間に成立したのではなく、イエスはあくまでユダヤ教の枠内で改革を図ろうとし、それが受け入れられずに処刑されたのであり、彼の活動範囲もエルサレム周辺のイスラエル人社会に限定されていました。しかし、イエスの復活を信じる弟子(使徒)たちは各地で「イエスこそ真の救世主(キリスト)である」として彼の教えを熱心に説いてまわりました。
 
 イエスの第一弟子で漁師出身のペテロは、キリスト教設立の中心となり、ローマでの伝道中に殉教、また元はパリサイ派のユダヤ教徒で後に回心したパウロは、キリスト教の理論的基礎を築くものの、ローマでの伝道中にネロの迫害にあって殉教しました。しかし、彼らのそうした命がけの活動により、民俗の枠を越えて信者はどんどん増えていきました。4世紀ごろにはローマ帝国の国教となり、やがて現在のキリスト教のような世界宗教へと発展していったのです。
 
 なお、『新約聖書』とは、神とイエスによって結ばれた新しい契約について記された書で、4つの福音書と使徒たちの伝道の記録を含むキリスト教の聖典のことです。また、4つの福音書は「マタイ伝」「マルコ伝」「ルカ伝」「ヨハネ伝」からなっています。

【PR】

イエス・キリストの言葉から

  • 人はパンのみによって生きるのではない。神の口から出る一つ一つの言葉によって生きる。
  • いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい。
  • 心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。
  • いつも与えなさい。そうすれば、人々はあなた方に与えてくれるでしょう。
  • あなたがたは、求めないから得られないのだ。
  • 求めよ、さらば与えられん。
    たずねよ、さらば見出されん。
    門を叩け、さらば開かれん。
  • あなたの父母を楽しませ、あなたを産んだ母を喜ばせよ。
  • あなた方に新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。
  • 己を愛するごとく、汝の隣人を愛せよ。
  • 自分の敵を愛し、迫害する者のために祈りなさい。
  • 人、その友のために命を捨てる。これより大いなる愛はない。
  • あなたの敵を愛しなさい。
    あなたを呪う者を祝福しなさい。
    あなたを憎む者のために良いことをしなさい。
    悪を以てあなたに接する者、あなたを迫害する者のために祈りなさい。
  • 明日のことを思いわずらうな。明日のことは、明日自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。
  • 明日のことを誇るな。一日のうちに何が起こるか、あなたは知らないからだ。
  • 暗いと不平を言うよりも、進んで明かりを点けましょう。
  • 人々にしてほしいと、あなた方が望むことを、人々にもそのとおりにせよ。
  • もしも、あなた方が人々のあやまちを許すならば、あなた方の天の父も、あなたがたを許してくださるであろう。
  • あなたの剣を元のところにおさめなさい。剣をとる者はみな、剣で滅びる。
  • 悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。
  • 自分の口と舌とを守る者は、自分自身を守って苦しみに会わない。
  • 人生は短く、苦しみは絶えない。花のように咲き出ては、しおれ、影のように移ろい、永らえることはない。
  • 惜しんでわずかに種をまく者は、わずかに刈り取ることしかできない。惜しまず豊かに種をまく者は、豊かに刈り取ることができる。
  • あなたが決意することは、成就する。
  • 汝ら、善き行いをもって、その身の飾りとせよ。
  • 父よ、彼らをお許しください。彼らは何をしているのか分からずにいるのです。~イエスが磔にされた際の言葉

【PR】

目次へ

がんばれ高校生!

がんばる高校生のための文系の資料・問題集。

バナースペース

【PR】

イエスの誕生

イエス母マリアは、古代イスラエル王国のダビデ王の血を引いており、同じくダビデ家の末裔である大工ヨゼフと婚約する。
 
婚約中のある日、マリアの前に神の使いである天使ガブリエルが姿を現し、マリアが神の子を妊娠したという「受胎告知」をする。マリアからこのことを知らされたヨゼフは、結婚前に子供ができるのは信じられないとマリアと縁を切ろうとする。
 
しかしヨゼフの元にも天使ガブリエルが現れ、マリアが生む神の子に「イエス」と名付け、神の子とマリアを守るようにと告げる。信心深いヨゼフはお告げのとおり、マリアを妻として迎えた。
 
イエスは、二人の旅先の町外れにあった貧しい家畜小屋で生まれた。そして名前はお告げのとおり、「イエス」と名付けられた。

『出エジプト記』

『旧約聖書』中の一書。前半にはモーセの生い立ちと、エジプトに居留したイスラエル人がモーセに率いられて、圧政のエジプトから脱出し、シナイ山に至るまでが記され、後半には、モーセに与えられた十戒が記されている。

第1戒
あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。
第2戒
あなたは、自分のために、偶像を造ってはならない。
第3戒
あなたは、あなたの神、主の御名をみだりに唱えてはならない。
第4戒
安息日を覚えて、これを聖なる日とせよ。
第5戒
あなたの父と母を敬え。
第6戒
殺してはならない。
第7回
姦淫してはならない。
第8戒
盗んではならない。
第9回
あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない。
第10回
あなたの隣人の家を欲しがってはならない。

【PR】

HMV&BOOKS online

目次へ