多くの音楽・文学作品に題されている「仮面舞踏会」ですが、ここでご紹介するのはイタリアの作曲家ベルディのオペラです。そもそも仮面舞踏会は、参加者が仮面をつけたり仮装したりして出席する舞踏会のことで、発祥はイタリアのベネツィアだそうです。やがてヨーロッパ全土の宮廷など上流階級の間に広がり、ずいぶん人気を博したといいます。日本でも明治20年頃に鹿鳴館で催されたとか。
ところが、あまりの人気ぶりに、仮面舞踏会は風紀や倫理を乱す元凶だとして禁止令が出されることもあったようです。また、1792年、仮面舞踏会の最中にスウェーデン国王グスタフ3世が、彼の統治に不満を抱く貴族によって暗殺されるという衝撃的な事件が起きました。ベルディのオペラは、この事件を題材にしたウジェーヌ・スクリーヴの戯曲『グスタフ3世、または仮面舞踏会』が元になっています。
しかし、「国王暗殺」という由々しきテーマのために、ナポリの検閲で上演の許可が下りず、そのためヴェルディは、検閲がそれほど厳しくないローマで初演しようと計画、物語の舞台をイギリス植民地時代のアメリカのボストンに移し、さらに役名を変更するなどして何とか許可を得ることができました。はたして上演は大成功、ヴェルディの人気はさらに高まったのです。
改訂後の物語の簡単なあらすじは、総督リッカルドが、腹心のレナートの妻であるアメーリアと禁断の恋に陥ります。妻の裏切りを知ったレナートは激怒。そのため総督はレナート夫妻をイギリスに帰して、アメーリアから身を引こうと決意します。ところが、その意思が伝わる前に、仮面舞踏会でレナートが総督を殺そうと刺してしまうのです。総督は「私は確かにアメーリアを愛した。しかし、彼女は潔白だ」と告げ、息絶えてしまいます。・・・ざっとこんな感じです。
愛聴盤は、カラヤンが亡くなる半年前の1989年1〜2月に録音され、カラヤン最後のオペラ録音となった盤です。改訂前のオリジナル版によっています。このオペラは、同年のザルツブルク音楽祭で上演が予定されていたものの、カラヤンの体調不良から断念、リハーサルを兼ねたこの録音のみが残されました。その後の公演はショルティの指揮によって行われたといいます。カラヤンの録音盤は、音楽之友社による2017年版『名曲名盤500』では『仮面舞踏会』録音の第1位に選ばれており、カラヤンが有終の美を飾った名盤とされています。
【PR】
ちょっと美しい日本語
雨に関係する言葉 / 季節に関係する言葉 / 植物に関係する言葉 / そのほかの言葉 / とっておきの美しい日本語たち / 慣用句 / 三字熟語 / 日本の美しい地名 / 美しい大和言葉 |
【PR】
【PR】
→目次へ