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漢詩を読むがんばれ高校生!

漢江(かんこう)

杜牧

溶溶漾漾白鷗飛
綠淨春深好染衣
南去北來人自老
夕陽長送釣船歸

溶溶(ようよう)漾漾(ようよう)白鷗(はくおう)飛(と)ぶ
緑(みどり)浄(きよ)く春(はる)深(ふか)く衣(い)を染(そ)むるに好(よ)し
南去北来(なんきょほくらい)人(ひと)自(おのず)から老(お)ゆ
夕陽(せきよう)長(なが)く送(おく)る釣船(ちょうせん)の帰るを

【訳】
 豊かに水をたたえて流れる漢江、そのゆらゆらとたゆたう水面を、白い鷗(かもめ)が飛んで行く。川辺の緑は清らかで、春たけなわとなっており、私の衣を染めてしまうかのようだ。南へ北へと行き来しているうちに、人はいつしか年老いてしまう。夕陽が、家路につく釣り船をいつまでも見送っている。

【解説】
 漢江の川辺のみずみずしい春景色を詠んだ詩です。いつも変わらない春の夕暮れの景観の中に、ふと人生の無常を感じ取っています。鷗の白、水面の緑、そして夕陽の赤と、色彩の対比が鮮明で、読む者に強い印象を与えます。杜朴ならではの色彩感覚といえましょう。漢江は、中国の詩の世界では常に清らかなイメージでとらえられている川です。

 七言絶句。「飛・衣・歸」で韻を踏んでいます。〈漢江〉は川の名。漢水ともいい、陝西省西部に発し東流して長江に注ぐ。〈溶溶〉は水量が豊かでゆったり流れる様。〈漾漾〉はゆらゆらと波立つ様。このように同じ字を重ねた熟語を「重言(ちょうげん)」または「畳語(じょうご)」といいます。〈綠淨〉は川辺の水面が清らかな様子。〈春深〉は春たけなわである。〈南去北來〉は南に行ったり、北に行ったりすること。〈自老〉は、いつしか老いていく。

杜牧(とぼく)

晩唐第一の詩人(803年~853年)。杜甫の「老杜」に対し「小杜」と呼ばれる。長安の名門階級に生まれ、25歳で進子に合格し官吏となるが、政変のため中央での出世は得られなかった。30歳を過ぎて詩作を始め、毎晩のように妓楼に通い、風流の限りを尽くしたといわれる。剛直で気節のある詩風は秀麗、七言絶句に長じていた。

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がんばる高校生のための文系の資料・問題集。