杜牧
遠上寒山石径斜
白雲生処有人家
停車坐愛楓林晩
霜葉紅於二月花
遠く寒山(かんざん)に上れば石径(せっけい)斜めなり
白雲(はくうん)生ずる処(ところ)人家(じんか)有り
車を停(とど)めて坐(そぞろ)に愛(あい)す楓林(ふうりん)の晩(くれ)
霜葉(そうよう)は二月の花よりも紅(くれない)なり
【訳】
遠く寒々とした山に登っていくと、石だらけの小道が斜めに続いている。ふと見ると、白雲がかかるこんな所にも人家がある。車を止め、何気なく楓(かえで)の林の夕暮れを眺めている。霜に打たれて赤くなった紅葉は、二月の春の盛りに咲く桃の花よりもずっと赤い。
【解説】
杜牧の代表作の一つ『江南の春』に対し、こちらは秋の美しさをうたった詩です。「寒山・石径・白雲」の字句で秋の冷ややかな感じをただよわせ、「楓林・霜葉・紅・花」の字句で赤々と色づく美しさを描きだして、好対照になっています。
七言絶句。「斜・家・花」で韻を踏んでいます。〈山行〉は山歩き。〈寒山〉は秋から冬にかけての寒々とした山。〈石経〉は石の多い小道。〈坐〉は何気なく。〈楓林〉はカエデの林。〈二月花〉は旧暦の二月(現在の三~四月)、春の盛りに咲く桃の花。〈霜葉〉は霜に当たって紅葉した楓の葉。それは二月の花よりも赤い、といっているのが特徴的で有名な部分です。紅葉はただ散るだけなので、もともと紅葉を愛でる習慣はなかったのですが、この詩はその常識を覆したものとなっています。
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