
杜牧
清明時節雨紛紛
              路上行人欲断魂
 借問酒家何処有
              牧童遙指杏花村
清明(せいめい)の時節(じせつ)雨粉粉(あめふんぷん)
路上の行人(こうじん)魂(こん)を断(た)たんと欲(ほっ)す
              借問(しゃもん)す酒家(しゅか)は何(いず)れの処(ところ)にか有(あ)る
牧童(ぼくどう)遥(はる)かに指さす 杏花(きょうか)の村
【訳】
               清明の時節に、雨が降りしきっている。旅人が一人道を行けば、酒でも飲んで滅入った気持ちを晴らしたくなる。通りかかった牛飼いの少年に、近くに酒屋はないかと尋ねると、はるかかなた、杏(あんず)の花咲く村を指さして教えてくれた。
【解説】
               「清明」は二十四節気の一つで、春分から15日目、新暦の4月4~6日のころにあたります。一年の中でもっとも暖かい日とされ、この時代の中国では先祖の墓参りや郊外に散策に出かける習わしになっていました。この詩は、杜朴が江南の池州(ちしゅう)の刺史(しし)を勤めていた44歳のころで、比較的役人としての充実感を得ていた時期の作とされます。この詩も『江南春』と同様、春雨に煙るおぼろな風景をうたった前半2句と、白い杏の花が咲く村への描写に急転換させる後半2句との対比が印象的です。また、酒屋を尋ねられて「あっちだよ」と指さす少年の姿に、牧歌的な雰囲気が漂っています。
               
               七言絶句。「紛・魂・村」で韻を踏んでいます。〈雨粉紛〉は雨がしきりに降っているさま。せっかくの清明節の時期に、あいにくの雨が降り、肌寒いことを言っています。〈行人〉は旅人(ここでは作者)。〈欲断魂〉は心が折れそうになる。〈借問〉は試みに尋ねる。ちょっとお尋ねするが、の意。〈酒家〉は酒を売る店。〈牧童〉は牛飼いの少年。〈杏花村〉は杏の花が咲いている村。杏は梅によく似た果樹。なお、この杏花村がどこにあるのかについては、中国にはいたるところに「杏花村」があるため、諸説あり定まっていません。
 
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