杜牧
漢宮一百四十五
多下珠簾閉瑣窓
何処営巣夏将半
茅檐煙里語双双
漢宮(かんきゅう)一百四十五(いっぴゃくしじゅうご)
多(おお)く珠簾(しゅれん)を下ろして瑣窓(さそう)を閉(と)ざす
何(いず)れの処(ところ)にか巣(す)を営(いとな)まん夏(なつ)将(まさ)に半(なか)ばならんとするに
茅檐(ぼうえん)の煙里(えんり)語(かた)ること双双(そうそう)
【訳】
滅び去った漢の離宮は、百四十五。その多くは、珠の簾が下ろされ、美しい飾り窓は閉ざされている。ツバメは今はどこで巣を作っているのだろう、夏ももう半ばというこの時節に。ふと見れば、炊煙が立ち昇る農家の茅葺きの軒下で、一対ずつ鳴き交わしている。
【解説】
唐の首都長安にあって、いきなり「漢宮一百四十五」と、過去の漢王朝の壮麗な宮殿の面影を呼び出し、その寂れた空間情景に、斜陽にある唐王朝の現在の姿を浮き彫りにしています。かつては無数のツバメがそこに巣を作っていただろうに、今は炊煙をあげる農家の軒下で囀り合っている。栄枯盛衰を繰り返す権力の争いと、悠久な自然ともいえるツバメの営み、そして昔も今も変わらぬ庶民の暮らし。それらがたった四行に凝縮され、なおかつ余韻を残す佳篇です。
七言絶句。「五・窓・双」で韻を踏んでいます。〈村舎〉は村の家、農家。〈漢宮一百四十五〉は前漢の首都、長安付近にあった皇室宮殿の数。〈瑣窓〉は美しい飾り窓。〈営巣〉は巣を作ること。〈茅檐〉は茅葺きの軒下。〈煙里〉は煙に包まれて。〈双双〉は、ここではツバメが一対ずつ、の意。
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