本文へスキップ

子供たちのリベラル

 だいぶん前のことになりますが、ある小学校の先生が体験されたお話です。

 その先生が担任したクラスに、足に障害を持った男の子がいたそうです。といっても、まったく歩けないほどではなく、かといって他の子どもたちと同じに歩いたり走ったりはできません。障害があるのは足だけでしたから、ふつうの授業を受けるには何の差支えもありません。他の子と机を並べて、同じように勉強しています。

 ただ、体育の時間だけはそうはいきません。みんなといっしょには活動できず、彼だけはずっと見学でした。鉄棒のときもマット運動のときも、ドッジボールやソフトボールなどの球技のときも、彼はみんなが動き回っているのをただ見ているだけでした。

 先生は、そうして一人ぽつんとつまらなさそうにしている彼の姿を見るたび、辛くてなりませんでした。しかし、彼をみんなといっしょに扱うわけにはいきません。また、やれと言ってできるはずがありません。こればかりは仕方ないとあきらめていました。

 それから幾日かたったある日の放課後の出来事です。先生は、運動場で遊んでいる自分のクラスの子どもたちを見つけて、思わず自分の目を疑いました。ソフトボールに興じている子どもたちのなかに、何と、彼がいるではありませんか。しかもバッターボックスに立っています。

 いったいどうしたことかと目を凝らしていると、構えていた彼は、ボールに向かってバットを振り抜きました。カーン、いい当たり!

 そして、打球が飛ぶと同時に、彼の側に控えていた別の子が、ダッと一塁に向かって走り出したのです。走れない彼に代わってのいきなりのピンチランナーというわけです。結果はセーフ。打った彼とピンチランナーの子が顔を見合わせてのガッツポーズ。そのときの彼の何とうれしそうな顔。

 先生はその光景に感動し、涙があふれ出ました。自分ははじめから障害のある彼は仕方ないと決めつけていた。また、それが当然だとも思っていた。それなのに、子どもたちは自分たちなりに工夫して、自分たちだけのルールを決めて、障害のある彼をふつうに受け容れていた。何とすばらしい彼ら!

 先生は、子供たちのリベラル(寛容)さに頭が下がり、自分のふるまいを大きく恥じたのでした。

優しいエイリアン

 上の写真↑↑↑は、1997年に打ち上げられ、7年かかって土星に到着した探査機カッシーニが撮影した、土星から見た地球の写真です。大きな輪の下に見える白い小さな点が地球ですって。当たり前ですが、宇宙の中では私たちの地球もほんの点にしか見えない小さな星なんですね。何だか感慨深いです。

 カッシーニは、土星に到達すると土星の人工衛星になって206回も周回し、10年間にわたって数々の発見や観測結果をもたらしてくれました。撮影した写真は実に33万2,000枚に及んだそうです。想像を絶する大変な活動量です。しかし、最後は土星の大気圏に突入し、2010年の「はやぶさ」と同じように燃え尽きて消えたんですね。

 この措置は、そのまま飛行させておくと、土星の衛星のタイタンやエンゲラドゥスに衝突する恐れがあったため、カッシーニ本体に付着している地球の微生物が、生命が存在しているかもしれない両星の環境に影響を及ぼしてはならないという配慮からだったそうです。土星からみれば地球人はエイリアンに他ならないわけですが、ずいぶん優しいエイリアンですよね。


目次へ ↑このページの先頭へ