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これからの「頭がよい人」?

 近ごろ、こんな論調に接しました。かつては「頭がよい人」とは、高学歴で知識が豊富な人を指した。しかし、今の世の中、分からないことがあればグーグルが何でも教えてくれる。これからは知識量、情報量より、いつでもグーグルを検索して答えを引き出せる「うろ覚え力」が大切になるって。

 さらに、常識に果敢に挑戦し、発明や発見を行う人物に共通する能力は「考える」ことであり、決して知識や情報の多さではない。頭に過度に詰め込まれた知識や情報は、むしろ意識を吸い尽くす「毒」である。思考力を鍛えたいのであれば、情報を減らし、思考の割合を増やさなくてはならない、というのです。

 うーん、なるほどーとも思いますが、どういうもんでしょう。「頭に過度に詰め込まれた知識や情報」というような言い方をされると、いかにも弊害があるような印象を受けます。しかし、研究によれば、私たちの脳の記憶容量は無限大であり、もし思い出せないことがあるとしても、それは脳が記憶する価値がないと判断しているからだといいます。だから、忘れてはならないことは、脳は絶対に忘れない。

 ただ、「短期記憶」には、やはり限界があるそうです。一度にたくさんのことを学習して記憶しようとすると、頭がパンクする。私なんぞはしょっちゅう破裂寸前になりますが、しかし、それはコンピューターでいうところの一時記憶装置(メモリ)の容量の問題であって、ずっと記憶をためておくハードディスクドライブの問題ではないですね。

 いずれにしましても、長きにわたって蓄積された多くの知識や情報が、意識や思考を妨げるという論は、いささか疑問に思います。これまで長らく生きてきて、知識や情報が邪魔に思ったことは決してないですし、それらが多ければ多いほど、いろいろな考えが生まれるし、ひらめきも浮かびやすくなるはず。
 
 たとえばの話、季節の花を5つ知っている人と、20知っている人とでは、ウォーキングとか登下校の途上で目にする世界や感じ方は、格段に違ってくると思うんです。知識や情報が多すぎて邪魔になることなどない、まして毒になるなんて絶対にありえない。そう思いませんか?

三つ子の魂百まで

 私たち人間の脳みそは、「おぎゃー」と生まれた瞬間に神経細胞の数が一番多くて、間もなくドーンと減っていくというじゃありませんか。3歳になるまでに、実に約70%の神経細胞を排除してしまうそうです。3分の1しか残らない、ちょっと愕然としますね。ただし生き残った30%はその後も変化しないそうです。健康ならば100歳を超えても、ずっとその数を保持し続けるって。

 てっきり加齢とともに徐々に減っていくのかと思っていましたけど、そうじゃないんですね。それにしても、なぜ、せっかく持って生まれた神経細胞の大半を捨ててしまうのか。この理由が凄いです。赤ちゃんは、どんな世界に生まれてくるか分からない。そのため、生まれおちた環境に順応すべく可能な限り多くの神経細胞をもって生まれ、3歳までの間に無用なものを捨てるというんです。まさに生命の深謀遠慮、すごいカラクリですね。

 しかし、考えてみれば70%も無くなるなんて、あまりにもったいない話です。少しでも多くの神経細胞を残すにはどうすればいいのか。3歳までにできうる限り多くの知識や体験を詰め込んでおくようにしたらいいんでしょうか。この時期の子供の脳って、まるで乾いたスポンジが水を吸うようにどんどん知識を吸収していきますからね。そういえば「三つ子の魂、百まで」という諺がありますが、まことに「言い得て妙」です。
 

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