杜甫
江碧鳥愈白
山青花欲然
今春看又過
何日是帰年
江(こう)碧(みどり)にして鳥(とり)愈(いよい)よ白く
山(やま)青くして花(はな)然(も)えんと欲(ほっ)す
今春(こんしゅん)看(みすみす)又(また)過ぐ
何(いづ)れの日にか是(こ)れ帰年(きねん)ならん
【訳】
川は深緑に映え、鳥はいっそう白く見える。山は青々とし、花は燃えるように赤く咲いている。今年の春もあっという間に過ぎてしまう。いったい、いつになったら故郷に帰ることができるのだろう。
【解説】
杜甫53歳の作。「絶句」は詩の形式のことであり、特に題はありません。2首連作の第2首にあたります。44歳で低い地位ながらも官職についた杜甫は、戦乱(安史の乱)に巻き込まれ長安に幽閉されますが、その後なんとか唐朝は平穏を戻し、杜甫も官職に復帰します。ところがまもなく杜甫はこの官職を捨て、あちこちを放浪し、やがて成都に建ててあった我が家・草堂に戻ってきます。しかし、杜甫の故郷は成都ではなく北の洛陽です。成都の美しい景色もなかなか馴染めなかったのか、強い望郷の念を詠んだ歌です。大自然と複雑に屈折する心理をみごとに凝縮された作品であり、杜甫の極めつけの名詩とされます。
五言絶句。「然・年」で韻を踏んでいます。〈江〉は揚子江の支流の錦江。〈碧〉はエメラルドの色、深緑。〈愈〉は、ますます、いよいよ。〈然〉は燃と同じ。燃えるように赤い。〈看〉は見る見るうちに、あっという間にの意。〈何日〉は、いつになったら。〈帰年〉は故郷に帰れる年。
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