あ行
◆青い鳥 ~メーテルリンク
貧しい木こりの子どもの、チルチルとミチルの兄妹が、クリスマス前夜に夢を見る。兄妹は、魔法使いの老婆から、病気の娘のために青い鳥を探してきてくれと頼まれる。そして、犬、ネコ、ほかに光や水などの精をつれて、思い出の国や未来の国を訪ね歩く。しかし、青い鳥は見つからず、むなしく帰ってくる。
二人が夢から覚めると、何と、自分たちが飼っている鳥が青いことに気がつく。
◆青ひげ ~シャルル・ペロー
青いひげを生やしている金持ちの男がいて、その風貌から人々に恐れられていた。また、青ひげの男はこれまで6度結婚しながら、その妻たちはみな行方不明になっていた。そして、1人の娘が7度目の妻として青ひげに嫁ぐことになった。結婚してしばらくして、青ひげが旅に出る際、城の中は好きに見てもいいが、一部屋だけは絶対に入ってはいけないと言われた。しかし、娘は好奇心から開けてしまう。その部屋は血みどろの恐ろしい部屋で、そこを見たのが青ひげに知られてしまった娘は殺されそうになり、寸前のところで兄たちに助けてもらう。
◆赤ずきん ~グリム兄弟
病気のおばあさんのお見舞いにいく少女赤ずきんは、途中でオオカミに出会う。オオカミは赤ずきんをだまして先回りをし、おばあさんを食べたうえ、おばあさんに化けて、やって来た赤ずきんをも飲み込んでしまう。通りかかった猟師が寝ているオオカミを見つけ、おなかを切りさいて二人を救い出す。腹に石を詰め込まれたオオカミは、その重さでたおれて死んでしまう。
◆あしながおじさん ~ジーン・ウェブスター
孤児院で育った身寄りのない少女ジュディの文才が、ある資産家の目にとまり、毎月、手紙を書いて送ることを条件に、大学進学のための資金援助を受ける。ジュディがその援助者を「あしながおじさん」と呼び、日々の生活をつづった手紙の内容が、本作品の内容となっている。
「あしながおじさん」の呼称は、現代日本では、広く学生への援助者の意味で用いられている。
◆アリババと40人の盗賊 ~イスラムに伝わる物語
貧しいながらも真面目で働き者のアリババは、ある日、40人の盗賊が奪った宝を山の洞穴に隠しているのを目撃した。盗賊たちが立ち去った後、アリババはロバの背中に積めるだけの宝を持ち帰り、金持ちになった。アリババの兄である金持ちのカシムがそれを知り、自分も宝を持ち帰ろうと洞穴に行くが、盗賊たちに見つかって殺される。アリババはカシムの息子を引き取って裕福に暮らし始める。他に仲間がいると気づいた盗賊たちはアリババを襲いに来るが、カシムの女奴隷だったモルジアナの機転で返り討ちに遭う。モルジアナはカシムの息子と結婚し、一家は末永く栄えた。
◆アンクル・トムの小屋 ~ストウ夫人
信心深い中年の男の奴隷トムはシェルビー家に仕え、息子のジョージから慕われて幸福な日々を送っていたが、シェルビー家が困窮し、売られていくことになる。その途中、シンクレアの娘エバが溺死しかけたのを救い、シンクレアはトムを召使いとし、その行為に報いる。しかし、シンクレア
が死ぬとトムは再び売られ、新しい主人レグリーのもとで残虐な扱いを受け、トムは死に追いやられる。死の直前に、トムを買い 戻そうと駆けつけたジョージと再会したが、すでに手遅れだった。ジョージはトムの亡骸をていねいに葬った。
◆ある母親の話 ~アンデルセン
わが子を死神に連れ去られた母親が、自分の美しい黒髪や目をも犠牲にして、その後を追い、神に委託されてすべての人間の命を象徴する花や木を保管している大温室にたどり着く。母親は死神と争い、わが子を返してくれなければここの草木を引き抜いてしまうという。しかし、死神から、わが子の死だけを悲しみ他の母親たちの悲しみにたいして無関心な心をさとされ、また生も死もすべて神の御心(みこころ)のままであると説き聞かされる。母親は頭(こうべ)をうなだれて「主よ、どうぞ御心のままに」といい、死は彼女の子どもを運び去る。
◆家なき子 ~エクトル・マロゾラ
イギリスの名門の家に生まれながら、盗まれて棄てられた少年レミは、養い親にも見放され、旅芸人のピタリス老人とフランス各地を旅して歩く。ピタリス老人の死後は、花つくりの一家に助けられてしばらく暮らすが、その家が没落しふたたび旅に出る。炭坑の町で事故に遭い、九死に一生を得て養母のもとにもどると、生みの親の所在が分かる。だが、その生みの親とは、レミを盗んだ張本人であり、しかもレミが旅の途中しばらくいっしょに暮らした、遊覧船「白鳥号」のミリガン夫人だった。レミは「白鳥号」を追い求めてようやく母に再会し、二人は幸福な日々を送る。
◆いばら姫 ~グリム兄弟
昔、子供ができなくて悩んでいた王と王妃がいた。ある時、王妃の前にカエルが現れて、「あなたは1年以内に女の子を産む」と予言し、その通りに女の子が生まれた。喜んだ王と王妃は、国内に住む魔法使いの女を祝宴に招待することにした。しかし、魔法使いの女は国内に13人いたにもかかわらず、もてなすために必要な金の皿が12枚しかなかったため、1人の魔法使いだけが除かれた。
祝宴に招待された12人の魔法使いたちは、それぞれ生まれたばかりの王女に「徳」「美」「富」などの魔法を用いた贈り物を授けるが、そこへ突如、13人目の魔法使いが現れ、「その子は15歳で死ぬ」と予言して立ち去る。みな騒然とするが、12人の魔法使いのうちの1人が、その呪いを、死ぬのではなく100年の眠りに変えた。はたして王女が15歳になった時、城の人々とともに眠りに落ち、その城は茨(いばら)におおわれる。100年ののち、この国を訪れた王子の接吻によって目ざめる。
◆おやゆび姫 ~アンデルセン
チューリップの花から生まれたおやゆび姫は、親指ほどの大きさしかない小さい少女だった。ある日、ヒキガエルに誘拐され、魚たちの助けで何とか脱出するものの、その後、コガネムシに誘拐され、更に置き去りにされてしまう。秋になり、おやゆび姫は野ネズミのお婆さんの許に居候するが、隣の家の金持ちのモグラに結婚を強要される。おやゆび姫は、モグラの家にいた瀕死のツバメを介抱し、結婚式の日に、ツバメと共に花の国へ行く。そこで、花の国の王子様と結婚する。
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か行
◆北風と太陽 ~イソップ
北風と太陽が力くらべをすることになり、旅人が着ているオーバーを早く脱がせたほうが勝ちと決めた。まず北風から始めたが、北風が強く吹けば吹くほど、旅人はオーバーをしっかりとおさえこんだ。つぎに太陽の番になり、すこしずつ熱をふやしたところ、旅人はオーバーを脱いだ。無理強いをするより、やさしく説得するほうがよほど効果的だという話。
◆銀河鉄道の夜 ~宮沢賢治
貧しい少年のジョバンニは、アルバイトをしながら病気の母を看病している。学校の勉強についていけず、同級生からはよく馬鹿にされていた。「星祭」の夜、同級生たちがお祭りを楽しむなか、ジョバンニは一人、町はずれの丘へ向かう。そして気がつくと、銀河鉄道の中にいた。
車内には親友のカムパネルラもいて、2人は他の乗客と会話しながら、美しい風景の中を旅する。乗客たちがサウザンクロスで下車した後、2人きりで「本当の幸せ」について話していると、突如カムパネルラが姿を消し、ジョバンニは元の丘で目を覚ます。
家への帰り道、ジョバンニは川の近くに人だかりができているのに気づく。そこで、カムパネルラが、川に落ちた友達を助けるため川へ入り、行方不明になったことを知る。
◆クリスマス・キャロル ~ディケンズ
スクルージは、冷酷な守銭奴であるスクルージは、人間の心の暖かみや愛情などとはまったく無縁で、血も涙もない、強欲で、金儲け一筋の商売をしていた。彼にとってクリスマスの季節は、得にならないことをして浮かれる馬鹿げた人々を目にする不快な日々であった。そこへ、かつての仕事仲間で、7年前のクリスマス・イヴの日に亡くなったマーレイの亡霊が現れる。マーレイの亡霊は、死後の世界での経験から「守銭奴」の悲惨な末路を語り、スクルージの生き方を諫める。そして、スクルージの人生を救う最後の希望として、これから3人の精霊が訪れると告げて消える。
スクルージのもとに、過去・現在・未来の3人の精霊が順に現れた。スクルージは、忘れていた少年時代、青年時代、7年前のことを目にする。孤独のなかで、しかし夢を持っていた少年時代、見習いとして働いていた青年時代には、雇い主が開くクリスマスの舞踏会で人々が楽しんでいるところを目の当たりにする。最後に、スクルージは自分の未来を知ることになる。
◆賢者の贈り物 ~オー・ヘンリー
クリスマス前日、貧しい夫婦が、お互いのクリスマス・プレゼントを買うために、お金を工面しようとする。妻のデラは、自分の美しい髪を売って、夫のジムが大切にしている懐中時計に付けるプラチナの鎖を買う。一方、ジムは、懐中時計を質に入れて、デラの髪に似合うべっこうの櫛(くし)を買う。
クリスマス当日、デラが買ったプラチナの鎖が付くはずだった懐中時計は夫の手元にはすでに無く、ジムが買ったべっこうの櫛が留めるはずだった妻の髪もすでに無く、結局お互いのプレゼントは無駄になってしまった。しかし、夫婦は、お互いの「思いやり」をプレゼントとして受け取ることになった。
◆小人の靴屋 ~グリム兄弟
正直者の靴屋は、だんだん貧しくなり、材料の皮を買うお金も尽き、とうとう靴一足分の皮だけになってしまう。ところが翌朝、不思議なことに見事な靴ができあがっていて、すぐに売れた。同じことが続いたある夜、靴屋さんが工房をこっそりのぞいてみると、二人のかわいい小人が現れて・・・・・・。
◆ごんぎつね ~新見南吉
ひとりぼっちの小狐の「ごん」は、村へ出ては悪戯ばかりして村人を困らせていた。ある日、ごんは川で魚を捕まえている兵十(へいじゅう)を見かけ、兵十が捕った魚やウナギを逃がすという悪戯をしてしまう。それからしばらくして兵十の母親の葬列を見たごんは、そのとき逃がした魚やウナギは、兵十が病気の母親のために捕っていたのだと気づき後悔する。ごんは償いに魚や栗を兵十の家に密かに運ぶ。しかし、ごんは兵十に火縄銃で撃たれて死んでしまう。
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さ行
◆最後の授業 ~アルフォンス・ドーデ
フランス領アルザス地方に住むフランツ少年は、学校が嫌いで、その日も村の小さな学校に遅刻した。てっきり担任のアメル先生に叱られると思っていたが、意外なことに、先生は怒らずに穏やかに着席を促した。気がつくと、教室の後ろに元村長や村の老人たちが正装して集まっている。先生は、教室の皆に向かって話しはじめる。
「私がここで、フランス語の授業をするのは、これが最後です。普仏戦争でフランスが負けたため、アルザスはプロイセン領になり、ドイツ語しか教えてはいけないことになりました。これが、私のフランス語の最後の授業です」。これを聞いたフランツ少年は激しい衝撃を受け、今日はいっそのこと学校をさぼろうかと考えていた自分を深く恥じる。
◆最後の一葉 ~オー・ヘンリー
スーとジョンジーは芸術家たちが集まるアパートに仲良く暮らし、画家になることを夢見ていた。しかしジョンジーが重い肺炎にかかり、窓から見える隣家の壁をはう蔦(つた)の葉が落ちていくの数え、「あの葉がすべて落ちたら、私も死んでしまう」と言い出すようになる。スーは同じアパートに住む老画家ベアマンに相談に行く。折から嵐になり、今にも蔦の葉は全て落ちてしまいそうだった。
次の日、ジョンジーはスーにカーテンを開けてほしいと頼む。二人は蔦の葉はすべて落ちてしまったのでは、と思っていたが、たった一枚の葉だけが残っていた。嵐はひどくなる一方だったが、その次の日も最後の一葉は散らなかった。ジョンジーは生きる希望を見出し、医者も、この調子なら肺炎も治るだろうと言ってくれた。ジョンジーは喜んだ。
実は一昨日の嵐で、本物の葉は全て散ってしまっていた。二人が最後の一葉だと思っていたのは、ベアマンが老いた体にむち打って描き出した絵だったのだ。ベアマンは冬の雨にずぶ濡れになったために、2日後に肺炎にかかって亡くなってしまった。真相を悟ったスーは、あの「最後の一葉」こそ、ベアマンがいつか描いてみせると言い続けていた傑作であったのだと評する。
◆西遊記 ~中国明代の小説
石から生まれ、変化の術と觔斗雲(きんとうん)の術を使って暴れ回る怪猿・孫悟空は、釈迦によってとりおさえられ、監禁される。のち、天竺(てんじく)に経文を求めに行く三蔵法師(さんぞうほうし)に助け出され、猪八戒(ちょはっかい)、沙悟浄(さごじょう)という天界から追放された化け物のような二人とともに随行し、道中の81の危難から三蔵法師を守り、目的を果たす。
◆ジャックと豆の木 ~イングランド地方の民謡
怠け者のジャックが、自分の牛と交換に豆を手に入れる。そしてその豆は芽を出し、一晩のうちに空高く伸びてしまう。豆の木を登ったジャックは、空の国にたどり着き、巨人が父親から奪った竪琴と金の卵を産むニワトリと金の袋を奪い返す。そして、巨人を退治する。
◆小公子 ~バーネット
少年セドリックは、母親と二人でニューヨークに暮らし、気むずかしい雑貨屋のホッブスや靴磨きのディックと仲良しだった。ある日、イギリスから祖父の使いがやって来て、セドリックが伯爵家の跡継ぎだと告げる。母と共にイギリスに渡り、老伯爵の祖父とお城で暮らし始めるが、伯爵は息子をたぶらかしたアメリカ女を憎んでいたため、母子は離れ離れで暮らす。セドリックは、頑迷で孤独な祖父を、その愛くるしさや清らかな心で正しい道へと導いていく。また、伯爵の財産をねらうミンナの陰謀に苦しめられるが、打ち破り、ついに正当な跡継ぎになり、母親とも一緒に暮らせるようになる。
◆小公女 ~バーネット
イギリス領インド生まれのセーラ・クルーは、イギリスへ帰国し、ミス・ミンチンのセレクト女子寄宿学校に入学する。セーラは空想好きの素直な性格で人気者になり、不自由なく暮らしていたが、11歳の誕生日前に事件が起きる。ダイヤモンドの発掘事業を手がけていた父親が突然死去し、身寄りをなくしたセーラの生活は一変してしまう。
ミンチン院長は、それまでの出資金、学費などを回収できなくなったとし、セーラの持ち物を差し押さえた上で、屋根裏部屋住まいのメイドとして働くように命じる。セーラは突如訪れた不幸と、不慣れな暮らしの中でも「公女様(プリンセス)」のつもりで、気高さと優しさを失わずに日々を過ごす。学院を卒業後、セーラは、市長夫人の推薦で上級学校へ進学、クリスフォード氏や市長夫人の後ろだてで、より高い知性や教養を磨く。
◆白雪姫 ~グリム兄弟
白雪姫は王妃の継母にひどく妬まれていた。殺されそうになって、森に逃れて7人の小人たちといっしょに暮らす。白雪姫が生きているのを知った王妃は、とうとう白雪姫を殺し、魔法の鏡にたずねて、自分がいちばんの美女であることを知って安心する。死んだ白雪姫は、お棺に入れられてある王子に贈られた。運ばれている途中で白雪姫は生き返り、王子とめでたく結婚する。
◆空とぶトランク ~アンデルセン
無一文になった商人の息子が、友人からトランクをもらった。そのトランクの中に自分が入ると、トランクは空に舞い上がり、そのまま遥かトルコまで飛んでいった。トルコでは、王のお姫さまが悪い婿を迎えてしまうという占いが出たため、お姫さまは外に出ずにいた。息子はトランクでお姫さまのところに飛んでゆき、自分はトルコの神様だと名乗ってお姫様に求婚する。お姫様はそれを受けるが、別の日にもう一度来て王と王妃に面白い話を聞かせるように注文する。
息子は面白い話を考え、約束の日に王と王妃にその話を聞かせると、二人は大変面白がり、お姫様との結婚を認めた。婚礼が決まり国中でお祝いが始まると、息子も何かお祝いがしたくなり、花火をたくさん買い込んでトランクに詰め、空の上で打ち上げた。しかし、息子がトランクでお姫様のところに飛んでいこうとすると、トランクは花火から出た火で燃えてしまっており、お姫様には二度と会えなくなってしまった。
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た・な行
◆宝島 ~スティーブンソン
港の宿屋に泊まり客としてやってきた謎の大男ビリー・ボーンズが持っていた財宝の地図を、宿屋の息子ジム・ホーキンズが手に入れる。ジムは信頼できる仲間を集め、船を仕立てて宝の島に向かう。かつてボーンズが仕えていた海賊フリント船長の元一味たちもこの宝を狙っていて、ジムたちと死闘を繰り広げる。しかし、海賊たちの間にも内輪もめが起こり、また昔この島に置きざりにされた元海賊のベン・ガンの助けを借りて、一行は海賊たちを撃退し、財宝を手に入れることに成功する。
◆ちびくろさんぼ ~バンナーマン
ちびくろさんぼが、父親のジャンボと母親のマンボから贈られた赤い上着と青いズボンと紫のクツを身につけ、緑のこうもり傘をさして、ジャングルを散歩していた。すると、四頭のトラが次々に現れて、両親からの贈り物を奪ってしまった。しかし、やがてトラたちは仲間げんかをしたあげく、溶けてバターになり、さんぼは持ち物を取り返した。
◆トロッコ~芥川龍之介
8歳の良平は、村はずれの軽便鉄道の工事現場で使われているトロッコに強く心惹かれる。ある時、トロッコ押しを手伝うといって二人の土工と一緒にトロッコを押す機会を得る。初めこそ楽しかったものの、だんだん遠くに来るにつれ、良平の心に次第に不安が募っていく。日も暮れかけたころ、土工に「われはもう帰んな」と言われ、今まで経験したことのない長い夜の道のりをたった一人で帰らなければならないことを知る。良平は必死になって家に向かって走る。やっとの思いで家の門口に駆けこむと、感情があふれ出し、大声で泣きじゃくる。
良平は26歳になり、妻子を持って東京の雑誌社で校正の仕事をしている。疲れ果てた時、彼は何の理由もなく、その時のことを思い出す。今も良平の前には、あの時の苦しみのような薄暗い一筋の道が続いているようだった。
◆泣いた赤鬼~浜田廣介
ある山に、心優しい赤鬼が一人暮らしていた。赤鬼は人間と仲良くなりたいと考えていたが、村人は赤鬼の優しさがわからず、怖がって逃げてしまう。赤鬼は孤独と寂しさに耐えきれなくなり、親友の青鬼に相談した。青鬼は「俺が人間の村へ出かけて大暴れをする。そこへ君が出てきて、俺をこらしめる。そうすれば人間たちにも君がやさしい鬼だということがわかるだろう」という策を思いついた。赤鬼は申し訳ないと思ったが、青鬼は強引に赤鬼を連れ、人間たちが住む村へと向かった。青鬼は人間を襲う芝居をし、赤鬼は人間と仲良くなれた。しかし、青鬼は事実を人間に知られないよう、遠いところに行くという手紙を残して去り、赤鬼が手紙を読んで泣いた。
◆長靴をはいた猫~グリム兄弟
貧しい粉ひきの一家の父親が死んでしまい、3人の息子が残された。遺産として、長男には粉ひき小屋、二男にはロバ、末の三男には猫を一匹があたえられた。三男が自分だけ損をしたとがっかりしていると、猫は長靴をはき、三男をしあわせにするためいろんなことをする。まずはウサギや鳥を捕まえてお城の王様に届け、こう言った。「これはカラバ侯爵からの贈り物です」。カラバ侯爵というのは、猫が勝手に三男をそう名づけた名だった。さらに猫は、王様にカラバ侯爵が裕福であると信じ込ませ、人食い鬼をだまして実際に財産を手に入れる。カラバ侯爵に会った王様は、彼の謙虚な人柄を気に入り、自分の娘と結婚してくれるよう申し出る。三男は、王様の娘と結婚し、しあわせにくらす。
◆人魚姫 ~アンデルセン
深い海の底に人魚たちがすむ宮殿があった。王様には6人の姫があり、姫たちは15歳になると海の上に浮かび出ることを許された。心やさしい末娘がようやく海に浮かび出たとき、船に乗っていた人間の王子を一目見て好きになる。そして、嵐で船が沈んでしまったとき、必死になって王子を助ける。しかし、気を失っていた王子はそれに気がつかなかった。
姫は魔女の力をかりて、美しい声とひきかえに人間の姿になることができ、王子の城に出かけていって侍女になる。ところが、王子は彼女が命の恩人であることを知らないまま、隣の国の王女と結婚してしまう。王子の愛を得られなかった姫は、人魚にも戻ることができず、ついに海に身を投げ、その魂は空にのぼっていった。
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は行
◆裸の王様 ~アンデルセン
ある国に、新しい洋服が大好きなおしゃれな王様がいた。そこへ、2人の仕立て屋がやってきて、「愚か者やバカには見えない不思議な布地を織ることができます」と言う。実は2人は詐欺師だった。しかし、その話に王様は大いに喜んで洋服を注文し、2人はさっそく仕事にとりかかった。しばらくして王様が洋服の出来具合いを確認するために2人の作業の様子を見ると、目の前にあるはずの布地が見えない。王様はうろたえたが、家来たちの前で本当のことを言えず、見えない布地を褒め続けた。家来たちも王様の言う通りに布地を褒めた。
そうして、王様は見えもしない布地で作られた衣装を着て、パレードに出た。見物人たちはみな、自分が愚か者だと思われてはいけないと思い、王様の衣装を褒めた。しかし、見物人の中にいた小さな男の子が「王様は裸だ!」と叫んだ。それを聞いた周りの大人たちはざわめき、やがて「王様は裸だ」と叫び出した。王様は今さらパレードを取りやめることもできず、裸のまま歩き続けた。
◆ピノキオ ~コルローディ
指物師のジェペットじいさんが、一本の薪からあやつり人形をつくってピノキオと名づけた。ピノキオはできあがったときから大変なわんぱく小僧だった。ジェペットじいさんが上着を売って買ってくれた読本をかかえ、学校へ行くものの、途中で小屋がけの人形芝居に気をひかれて見物してしまう。芝居小屋の親方に身の上を聞かれ、金貨5枚をもらうが、家に帰る道中でずるがしこいキツネとネコにだまされ、しかも命までねらわれる。危ないところを青い髪の毛の仙女に救われ、はたらきバチの島で一度は学校に行くものの、こんども悪友にだまされて数々の危険な目にあう。最後にクジラに飲み込まれたジェペットじいさんを救い出し、ピノキオはよい子になる。
◆ふしぎの国のアリス ~キャロル
堤でうとうとと眠ってしまったアリスが、チョッキを着た白ウサギを追いかける夢を見る。そのうち穴に落ちてしまい、地下の国で多くのふしぎな体験をする。
お菓子を食べて巨人になったり、キノコで小さくなったり、頭の変な連中のお茶の会に出席したり、そうして美しい庭でトランプの女王に出逢う。最後にトランプの裁判に立ち会うが、そのばかばかしさに腹を立て、トランプに襲われたところで目が覚める。
◆フランダースの犬 ~ウィーダ
フランダース地方の小さい村に、おじいさんと暮らす少年ネルロと老犬パトラッシュがいた。ネルロは、パトラッシュのひく荷車で町へ牛乳を売りにいって貧しい生活をささえていた。絵の大好きなネルロは、ある日、金持ちの粉屋の娘アロアの肖像画を描いた。しかし、アロアの父親はネルロとネルロのおじいさんに冷たく当たり、おじいさんが亡くなったあと、ネルロを村から追い出してしまう。ネルロは、コンクールに出品した絵が落選して絶望し、雪の中で拾った粉屋の大金をパトラッシュに届けさせたが、凍死してしまう。
◆ブレーメンの音楽隊 ~グリム兄弟
かつて働き者だったロバは、年を取って力がなくなり、仕事ができなくなった。飼い主はロバにエサを与えず虐待するようになったので、ロバは逃げ出し、ブレーメンに行って音楽隊に入ろうと考える。旅の途中で、イヌ、ネコ、オンドリが加わった。一行は、ごちそうと金貨にあふれた泥棒の家を見つけた。ごちそうを食べたい彼らは知恵をしぼり、泥棒たちを追い出すことに成功、この家でいつまでも幸せに暮らした。
◆ヘンゼルとグレーテル ~グリム兄弟
ヘンゼルとグレーテルの兄妹は、貧しい木こりの家の子どもだった。両親は食べるのに困って、とうとう二人を森に棄ててしまう。二人は、道に迷い森をさまよい歩くうちに、お菓子でできた家を見つける。それは魔法使いの老婆の家で、二人は老婆につかまってしまう。ヘンゼルが魔法使いに食べられそうになったとき、グレーテルの機転であやうく難を逃れ、反対に魔法使いを焼き殺してしまう。
◆星の王子さま~サン・テグジュベリ
砂漠に墜落した飛行士の私は、奇妙な少年に出会い、ヒツジの絵を描いてくれと頼まれる。彼は恋人であるバラの花を自分の星に残して旅に出た王子で、いくつかの星を巡り渡った後に、地球に来たのだった。やがて、孤独な王子の前に一匹のキツネが現れ、本質的なものは目に見えない、また、他の存在を馴らして関係のきずなをつくることが大切だと教える。王子は、この世界に自分が責任を持たなければならないバラの花が存在することの深い意味を知る。
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ま行~
◆マッチ売りの少女 ~アンデルセン
おなかをすかした一人のマッチ売りの少女が、寒い大晦日の町角を、何もかぶらず裸足で歩いていた。マッチは一つも売れず、家へ帰ることもできない少女は、冷たくなった指をあたためるために、すわり込んで一本のマッチをすった。マッチの炎はあかあかと燃え、そのなかにさまざまな幻が見えてきた。はじめのマッチでは大きなストーブが、ついでご馳走がいっぱい並んだテーブル、それからクリスマスツリーが現れ、クリスマスの明かりは空高く昇って星となった。その光のなかに一人のおばあさんが出てきて、少女はあの幸せの場所に連れていってほしいとお願いする。おばあさんが消えないようにと、残りのマッチを全部すってしまうと、あたり一面が明るくなり、少女はおばあさんに抱かれて空に舞い上がっていった。
翌朝、少女はほほえみをうかべながら死んでいた。しかし、この少女がどんな美しいものを見、どんなに祝福され、おばあさんといっしょに新年をむかえたかを知る人はいなかった。
◆マレーン姫 ~グリム兄弟
むかしある王子が、強大な国のマレーン姫と愛しあっていたが、父である王は姫を別の人に嫁がせようとし、マレーン姫が拒むと、父王は怒って塔に閉じこめてしまった。7年後、マレーン姫は石の壁を削ってようやく塔を脱出したものの、すでに王国は滅んでおり、道をさまよっていると、ある見知らぬ国の城にたどりつく。マレーン姫は、城の台所で下ばたらきをすることになったが、実はその城の王子はマレーン姫と7年前に愛しあっていた王子だった。
王子は、マレーン姫は死んだと思っており、王子の父親はすでに別の花嫁を決めていた。その花嫁は、姿が醜く心もねじ曲がっていて、自分の醜さを恥じて部屋に閉じこもったままであり、マレーン姫はその花嫁に食事を運ばなければならなかった。結婚式の日になると、花嫁は自分の姿を人に笑われるのをおそれ、マレーン姫に花嫁の身代わりをつとめるよういいつける。花嫁の衣装を着たマレーン姫が王子の前にあらわれると、王子はその姿がマレーン姫にそっくりなので驚く。・・・・・・。
◆みにくいアヒルの子 ~アンデルセン
5羽の雛たちのなかで、一羽だけ体が大きく、毛の色も白く、みにくく生まれたアヒルの子。黄色い毛のほかの兄弟たちからいじめられ、母親からも追い出されるが、草むらの小鳥たちにも相手にされない。次に住みついたおばさんのところでも、ネコやニワトリにいじめられて、さまよい歩く。
そして、氷に閉ざされたつらい冬も過ぎて、やがて春が訪れたとき、みにくいアヒルの子は自分でも気がつかないうちに大空を飛ぶことができるようになっていた。アヒルの子は、じつはりっぱな白鳥の子だったのだ。
◆野性の叫び ~ジャック・ロンドン
カリフォルニアのある家の飼犬バックは立派な成犬に成長した。しかし、出入りの庭師によってアラスカに売り飛ばされ、そりを引く犬の群れに入る。そこでバックは、きびしい弱肉強食の原始の世界を経験し、非情な人間の仕打ちにも会う。そのうち心あたたかい飼い主ソートンに巡りあい、彼のために尽くそうとする。しかし、彼の死後、からだの中に湧き起こる野性の呼び声に応じて北極のオオカミの群れに入り、そのボスとなって自由な荒野の世界で過ごす。
◆夕鶴 ~木下順二
一面、雪におおわれた小さなあばら家で、お人よしの与ひょうと、美しい女房つうが幸せに暮らしている。つうは、与ひょうが助けた鶴の化身で、与ひょうのためにひそかに羽をぬいて高価なツルの千羽織(せんばおり)を織(お)っていた。しかし与ひょうは、金儲けをたくらむ運ずや惣どにそそのかされ、さらにつうに織物を織らせるが、約束を破ってつうの機織(はたお)りの姿をのぞいてしまう。最後まで織り終えてやせ細ったつうは、もとの空に飛び立っていく。
◆ライオンとキツネ ~イソップ
年老いて、からだが十分に動かなくなったライオンが、病気のふりをして穴の中にこもり、見舞いにやってきた他のけものを捕えては食べていた。ある日、キツネがやってきたが、穴の中に入ろうとしない。そこで、ライオンがその理由をたずねると、キツネは、「ええ、中に入ったけものの足跡はたくさんあるのに、出てきた足跡が一つもありませんからね」と答えた。
関連ページ:
イソップ寓話で人生勉強
◆若草物語 ~オルコット
時は19世紀半ば、南北戦争時代のアメリカの片田舎に、戦地に赴いた父の不在を預かる優しい母と、四姉妹の一家が住んでいた。美しく聡明な長女メグ、奔放で空想好きな次女ジョー、内気で優しい三女ベス、愛らしく夢見がちな四女エイミーと、いずれも感性豊かで個性的な少女だった。貧しくとも仲睦まじく幸せに暮らすこの四姉妹が、隣家のローレンス氏や少年ローリーらとの交流を通じ、大人の女性に近づいていくさまを描き出す。オルコットの自伝的小説。
◆わらしべ長者 ~日本の昔話
貧しい若者が、観音さまのお告げで、お寺を出て最初に手にした物を大切にするようにと言われる。若者はお堂を出たとたん転んで一本の藁を手にする。それを持って歩いていくとアブが飛んできたので、藁でしばって歩き続けた。泣きじゃくる赤ん坊がいたので、藁につけたアブをあげた。すると母親がお礼にと蜜柑をくれた。さらに歩くと、喉の渇きに苦しんでいる長者の娘がいたので、蜜柑を渡すと、代わりに上等な反物をくれた。反物を持って歩いていると、急病で倒れた馬と荷物を取り替えようと言われ、死にかけの馬を強引に引き取らされた。若者は馬を介抱し、馬は元気になった。馬を連れて城下町まで行くと、馬を気に入った長者が千両で買うと言う。あまりの金額に驚いて失神した男を、長者の娘が介抱するが、それは以前蜜柑をあげた娘だった。長者は男に娘を嫁に貰ってくれと言い、男は藁一本から大長者になった。
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