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漢詩を読むがんばれ高校生!

感鏡(鏡に感ず)

白居易

美人與我別
留鏡在匣中
自從花顏去
秋水無芙蓉
經年不開匣
紅埃覆青銅
今朝一拂拭
自照憔悴容
照罷重惆悵
背有雙盤龍

美人(びじん)我れと別る
鏡を留(とど)めて匣中(こうちゅう)に在り
花の顔(かんばせ)の去りてより
秋水(しゅうすい)に芙蓉(ふよう)無し
年を経ても匣(はこ)を開かず
紅(くれない)の埃(ほこり)は青銅(せいどう)を覆(おお)う
今朝(こんちょう)一たび払拭(ふっしょく)して
自ら憔悴(しょうすい)の容(すがた)
照らし罷(おわ)りて重ねて惆悵(ちゅうちょう)す
背に双(つか)いの盤(わだかま)れる龍(りゅう)有り

【訳】
 かわいい君とは別れてしまったが、そのときにくれた鏡を、今も箱の中にしまっている。花のような君の顔が見られなくなってから、秋の冷たい池に芙蓉の花がないのと同じように寂しい。
 長い間、その箱を開けなかったので、赤いほこりが青銅の鏡を覆っていた。今朝、ほこりを払って、自分の疲れ果てた姿を映してみた。
 見終わると悲しみが重なってくる。鏡の背には、つがいの龍が仲よくからみあっている。

【解説】
 30代になった白居易が、熱き青春時代を懐かしんで詠んだ詩です。進士の試験に合格する前、彼には若い白居易には湘霊(しょうれい)という恋人がいました。二人が別れてしまった経緯は分かりませんが、彼女が残してくれた鏡を見て思いにふけっています。すでに結婚して数年たっているわけですが、だからといって決して元の恋人を忘れられないのが「男」の性(さが)のようです。形式は五言古詩。

 なお、紀元前の『詩経』以来、男女や夫婦の愛情や、亡くなった妻への愛をうたった詩はありましたが、白居易のこの詩のように自らの恋愛経験をうたうのはこの時代に始まったとされます。

白居易(はくきょい)

中唐の政治家・詩人(772年~846年)。字により「白楽天」とよばれることが多い。地方官吏の次男として生まれ、口もきけぬ幼時、すでに「之」と「無」との字を弁別し、5歳のころから作詩を学び、16歳で早くも人を驚かす詩才をひらめかしたという。29歳で「進士」という科挙の中でも最も難しい試験に合格。李白・杜甫・韓愈とともに「李杜韓白」と並称された。日本には白居易が生きていた時代から彼の作品が伝わり、貴族の間で人気を博した。

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唐代になって新たに起こった近体詩(絶句・律詩)以前の詩、すなわち太古から随までの詩。大多数は五言または七言の句で構成されるが、七言古詩にはときに8字以上の句を含むこともある。古詩は、韻を踏むだけで、平仄や句数に制限がない。

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