白居易
把君詩卷燈前讀
詩盡燈殘天未明
眼痛滅燈猶闇坐
逆風吹浪打船聲
君(きみ)が詩巻(しかん)を把(と)って燈(とうぜん)に読む
詩(し)尽(つ)き燈(ともしび)残りて天(てん)未(いま)だ明けず
眼(め)痛み燈を滅(け)して猶(な)お闇坐(あんざ)すれば
逆風(ぎゃくふう)浪(なみ)を吹(ふ)いて船を打つの声(こえ)
【訳】
君の詩集を手に取って灯の前で読む。読み終えた時、灯はわずかに消え残っており、空はまだ明けていない。眼に痛みを覚え、灯を消し、そのまま暗がりの中に座っていると、逆風が波を吹き上げ、船にたたきつける音が聞こえる。
【解説】
815年、朝廷のある長安で太子左賛善太夫という職にあった白居易(44歳)は、宰相の武元衡が暗殺された事件をめぐり、上書を送り、暗殺者を捕まえるだけではなく、その暗殺者を裏で操っている存在を明らかにすべきだと主張しました。しかしこれが越権行為とみなされ、江州の司馬(長官の補佐官)に左遷されてしまいます。この詩は、新たな任地へ赴く途中、親友の元稹(げんしん)から「白楽天が江州司馬に左降せられしを聞く」(聞白楽天左降江州司馬)という詩が届き、それに返したものとされます。
七言絶句。「明・聲」で韻を踏んでいます。〈元九〉は親友の元稹(げんじん)のこと。〈詩巻〉は詩集。〈把〉は手に取る。〈詩尽〉は詩を読み終える。〈眼痛滅燈〉は、目が痛いので灯を消す。〈猶〉は、そのまま。〈闇坐〉は暗がりの中に座る。〈打船聲〉は船にたたきつける音。
詩中に「詩」と「燈」の語句が複数回使われており、短詩形式である絶句では異例の表現となっていますが、ここではむしろ作者の抑えきれない不安と悲しみが、強く読み手に伝わってきます。
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