白居易
已訝衾枕冷
復見窓戸明
夜深知雪重
時聞折竹聲
已(すで)に訝(いぶか)る衾枕(きんちん)の冷やかなるを
復(ま)た見る窓戸(そうこ)の明らかなるを
夜 深(ふこ)うして雪の重きを知る
時に聞く折竹(せつちく)の声
【訳】
寝床についてもなかなか寝つかれず、蒲団も枕も冷え冷えとしている。ふと窓を見上げると、明りのように白い。夜がふけるにつれて、雪がだいぶん積もったのだろう。耳を澄ませば、時折り、雪の重みで竹が折れる音さえ聞こえてくる。
【解説】
816年、江州での作。朝廷のある長安で太子左賛善太夫という職にあった白居易は、宰相の武元衡が暗殺された事件(815年)をめぐり、上書を送り、暗殺者を捕まえるだけではなく、その暗殺者を裏で操っている存在を明らかにすべきだと主張しました。しかしこれが越権行為とみなされ、江州(江西省)の司馬(州の長官の補佐官)に左遷されてしまいます。白居易の多くの閑適詩(日常生活の中でわき起こる感興を詠じた詩)が生まれたのはこの時期にあたります。
五言絶句。「明・聲」で韻を踏んでいます。〈夜雪〉は夜に降る雪。〈已〉は、すでに、とっくに。〈訝〉は、いぶかる、怪しむ。〈衾枕〉は布団と枕。〈復〉は、その上、さらに。〈見〉は目に入ること。積極的に見る場合は「看」。〈窓戸〉は窓のこと。〈明〉は雪明かりによる。〈夜深〉は夜が更ける。〈時〉は時々、時おり。〈折竹〉は雪が積もって折れた竹。「雪」がテーマの詩でありながら、雪自体を見て直接うたうのではなく、布団や枕の冷たさや、窓の外の明るさ、そして竹の折れる音など、五感からさまざまに感じとり、間接的に夜の雪の深さを表現しています。
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