白居易
煙霄微月澹長空
銀漢秋期万古同
幾許歓情与離恨
年年并在此宵中
煙霄(えんしょう)微月(びげつ)長空(ちょうくう)に澹(あわ)く
銀漢(ぎんかん)秋期(しゅうき)万古(ばんこ)同じ
幾許(いくばく)ぞ歓情(かんじょう)と離恨(りこん)と
年年(ねんねん)并(なら)びに此(こ)の宵(よい)の中(うち)に在(あ)らん
【訳】
雲間の三日月が、大空に淡く浮かんでいる。天の川の秋の逢瀬は はるか昔から変わらない。二人の出逢いの喜びと別れの悲しみが、毎年毎年、どれほどこの宵のうちにあったことだろう。
【解説】
七夕を詠んだ詩。若き白居易の作品だろうとされ、あるいは七夕にことよせて、恋する女性への切ない思いを歌ったのかもしれません。七夕は中国の伝説で、「昔、天の川の東に天帝の娘の織女がいた。織女は毎日、機織りに励んでいて、天帝はそれを褒め讃え、川の西にいる牽牛に嫁がせた。ところが、織女は機織りをすっかり怠けるようになってしまった。怒った天帝は織女を連れ戻し、牽牛とは年に一度だけ、七月七日の夜に天の川を渡って逢うことを許した」というような内容です。七夕伝説は日本にも伝わり、正史に登場するのは『続日本紀』の天平6年(734年)の記事で、「天皇相撲の戯(わざ)を観(み)る。是の夕、南苑に徒御(いでま)し、文人に命じて七夕の詩を腑せしむ」とあるのが初見です。『万葉集』にも多くの七夕の歌が収められています。
七言絶句。「空・同・中」で韻を踏んでいます。〈煙霄〉は霞(かすみ)。〈微月〉は三日月。〈銀漢〉は天の川。〈秋期〉は秋の出逢い、逢瀬。〈歓情〉は喜びの気持ち。〈離恨〉は別離の悲しみ。1句目で空間の無限を、2句目で時間の無限を表現し、3・4句目で一瞬の心情を歌っています。
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