白居易
黃昏独立佛堂前
満地槐花満樹蟬
大抵四時心総苦
就中腸断是秋天
黃昏(こうこん)独(ひと)り立つ佛堂(ぶつどう)の前
地に満(み)つる槐花(かいか)樹(き)に満つる蟬(せみ)
大抵(たいてい)四時(しいじ)心(こころ)総(すべ)て苦(くる)しきも
就中(なかんずく)腸(はらわた)断(た)つは是(こ)れ秋天(しゅうてん)
【訳】
たそがれ時に、ひとり仏堂の前にたたずむ。散った槐の花が地面を覆い尽くし、樹上には至るところで蝉が鳴きしきる。
おおむね四季それぞれに悲しみを誘うものだが、とりわけ、秋の空は腸がちぎれるほどに悲しく感ずる。
【解説】
811年、白居易40歳の時に母の陳氏を亡くし、都から故郷の下邽(かけい)に帰って喪に服していた頃の作です。題名の「暮立」は、たそがれ時に仏堂の前にたたずんで、の意。前半で、薄暗がりの中、辺り一面に散った槐の花や樹々で鳴く蝉の様子を詠い、仏堂の前にただ一人たたずむ作者の孤独がいっそう際立ちます。また後半では、作者の置かれた状況から、もっとも寂しいのは秋だと言い、悲しみと孤独に打ちひしがれている気持ちが伝わってきます。
七言絶句。「前・蝉・天」で韻を踏んでいます。〈黃昏〉は、たそがれ時、日没直後。〈仏堂〉は仏像を安置した堂。〈槐花〉は槐(えんじゅ)の花。細かい白色の蝶の形をした花がたくさん咲きます。〈大抵〉は、おおむね。〈四時〉は四季。〈苦〉は、ここは痛み悲しむ意。〈就中〉は、とりわけ。〈断腸〉は、腸がちぎれるような非常な悲しみ。〈秋天〉は秋の空。
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